1

質問

先代の猫を看取った時の経験から獣医さんに相談してみたいことがあります。
この子は、一番太っているときは体重が7キロほどもあった大きなオスの黒猫で、とても元気な猫でした。
先代ネコの病気に関しては、ちょっとしたアレルギーがある他はいたって健康体で、一年に一回の予防接種以外はまったく獣医さんのお世話にならずに、19歳8か月という長寿でした。
19歳になったころお腹に癌が見つかり、獣医さんと「年齢的にも手術に耐えられるかどうかわからないので、自然に命を全うさせましょう」という結論に至りました。
ところが、半年後症状もかなり進んだので、一度獣医さんに見せようと同じ動物病院を訪ねたところ、以前相談した獣医さんは退職されていて、ほかの方が「抗がん剤治療を今からでも始めましょう」とおっしゃったのです。
納得がいかず、そのまま管などにつながれる入院を断り、自宅で看取りました。
家族は猫のお気に入りの場所で最後を迎えさせてあげられた事で後悔はありませんが、獣医さんにお聞きしたいのです。
癌治療は、どんな状況の場合、抗がん剤治療に踏み切るべきなのか。
猫の体力によっても違うと思います。
先代は体力もありましたが、今飼っている猫は体力もあまりなく、将来のためにも一度ご相談したいと思っています。

2

回答

非常に難しい質問ですね。なぜなら正解がないからです。言い換えれば、各ご家庭の数だけ答えがある、ともいえます。
癌治療の超基本的な手順は、①手術で腫瘍を切除する ②その後、抗がん剤や放射線治療などの治療をする という流れですが、様々な事情からこのような「王道」の手順を踏めない場合が非常に多いです。
ご長寿だった先代猫さんの場合、①切除 の時点で年齢的なリスクを懸念して手術を断念したのですね。高齢の猫ちゃんに麻酔をかけるのは危険を伴いますし、血液検査の結果なども手術に耐えるには不十分だったのかもしれません。②抗がん剤 もそうですが、治療には必ずリスクがあります。治療で見込まれる効果とリスクをそれぞれ天秤にかけ、最終的な判断は飼い主さんがくだすことになります。獣医師にできることは、判断の材料を提供することです。治療前に行う身体一般検査、血液検査やレントゲン検査はもちろんのこと、実際にその治療を始めた際にかかってくる大体の金額や通院頻度など、たくさんのことをお話しします。

抗がん剤治療を行うべきとされる状況は一般的に、治療に耐えられそうな体力があり、抗がん剤を使うと寿命が伸びたり生活の質が上がることが予想される場合です。手術ができない年齢・部位だった場合でも、抗がん剤の効果が期待できる場合は、手術なしで抗がん剤治療を行います。
先代猫さんはひょっとしたら、二人目の獣医師が診察した際には生活の質が低下していて、それを少しでも阻止するために抗がん剤を提案されたのかもしれません。しかし抗がん剤治療を行うにはもちろん管をつけなければなりませんし、少なくとも日帰り入院が必要です。そういった点を考慮して、猫ちゃんの幸せについて真剣に考え、考え抜いて最終的に飼い主さんがくだした選択は、「必ず正しい選択だ」と私は思っています。なぜなら、獣医師は客観的な情報は提供できても、おうちでの猫ちゃんの様子をつぶさに見せて頂くわけにはいきませんから。治療によって猫ちゃんが幸せになっているかどうかは、飼い主さんしか知り得ないことです。
いま飼っている猫ちゃんが万が一癌になってしまったときのために飼い主さんができることは、まずは早期発見のために健康診断をすることです。早くわかればわかるほど、治療の選択肢が広がります。そして、猫ちゃんのことを決めるのは飼い主さんご自身。その選択にどうか自信を持ってください。

著者:谷口史奈

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質問

先代の猫を看取った時の経験から獣医さんに相談してみたいことがあります。
この子は、一番太っているときは体重が7キロほどもあった大きなオスの黒猫で、とても元気な猫でした。
先代ネコの病気に関しては、ちょっとしたアレルギーがある他はいたって健康体で、一年に一回の予防接種以外はまったく獣医さんのお世話にならずに、19歳8か月という長寿でした。
19歳になったころお腹に癌が見つかり、獣医さんと「年齢的にも手術に耐えられるかどうかわからないので、自然に命を全うさせましょう」という結論に至りました。
ところが、半年後症状もかなり進んだので、一度獣医さんに見せようと同じ動物病院を訪ねたところ、以前相談した獣医さんは退職されていて、ほかの方が「抗がん剤治療を今からでも始めましょう」とおっしゃったのです。
納得がいかず、そのまま管などにつながれる入院を断り、自宅で看取りました。
家族は猫のお気に入りの場所で最後を迎えさせてあげられた事で後悔はありませんが、獣医さんにお聞きしたいのです。
癌治療は、どんな状況の場合、抗がん剤治療に踏み切るべきなのか。
猫の体力によっても違うと思います。
先代は体力もありましたが、今飼っている猫は体力もあまりなく、将来のためにも一度ご相談したいと思っています。

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回答

非常に難しい質問ですね。なぜなら正解がないからです。言い換えれば、各ご家庭の数だけ答えがある、ともいえます。
癌治療の超基本的な手順は、①手術で腫瘍を切除する ②その後、抗がん剤や放射線治療などの治療をする という流れですが、様々な事情からこのような「王道」の手順を踏めない場合が非常に多いです。
ご長寿だった先代猫さんの場合、①切除 の時点で年齢的なリスクを懸念して手術を断念したのですね。高齢の猫ちゃんに麻酔をかけるのは危険を伴いますし、血液検査の結果なども手術に耐えるには不十分だったのかもしれません。②抗がん剤 もそうですが、治療には必ずリスクがあります。治療で見込まれる効果とリスクをそれぞれ天秤にかけ、最終的な判断は飼い主さんがくだすことになります。獣医師にできることは、判断の材料を提供することです。治療前に行う身体一般検査、血液検査やレントゲン検査はもちろんのこと、実際にその治療を始めた際にかかってくる大体の金額や通院頻度など、たくさんのことをお話しします。

抗がん剤治療を行うべきとされる状況は一般的に、治療に耐えられそうな体力があり、抗がん剤を使うと寿命が伸びたり生活の質が上がることが予想される場合です。手術ができない年齢・部位だった場合でも、抗がん剤の効果が期待できる場合は、手術なしで抗がん剤治療を行います。
先代猫さんはひょっとしたら、二人目の獣医師が診察した際には生活の質が低下していて、それを少しでも阻止するために抗がん剤を提案されたのかもしれません。しかし抗がん剤治療を行うにはもちろん管をつけなければなりませんし、少なくとも日帰り入院が必要です。そういった点を考慮して、猫ちゃんの幸せについて真剣に考え、考え抜いて最終的に飼い主さんがくだした選択は、「必ず正しい選択だ」と私は思っています。なぜなら、獣医師は客観的な情報は提供できても、おうちでの猫ちゃんの様子をつぶさに見せて頂くわけにはいきませんから。治療によって猫ちゃんが幸せになっているかどうかは、飼い主さんしか知り得ないことです。
いま飼っている猫ちゃんが万が一癌になってしまったときのために飼い主さんができることは、まずは早期発見のために健康診断をすることです。早くわかればわかるほど、治療の選択肢が広がります。そして、猫ちゃんのことを決めるのは飼い主さんご自身。その選択にどうか自信を持ってください。

著者:谷口史奈