海の鼠表紙 (472x500)

『海の鼠』吉村昭著/新潮社/昭和48年(1973)5月/表題小説の他に、映画化もされた「魚影の群れ」や、「蝸牛」「鵜」も収録

物語は、仲間の葬式の話から始まる。台風被害にあった漁師たちの葬式だ。

戦後、小さな島のなかで苦労して田畑を作り、漁に出て、生計をたててきた島民たち。毎年のように台風の被害もある。それでも、力強く生きてきた島民たちだったが、昭和24年にはじまったネズミの異常繁殖には完全にまいってしまったようだ。

考え得る、あらゆる手を講じたのに減らないネズミ。丹精込めた田畑も被害にあい続け、中には農業をやめてしまう者もあったという。

猛毒性の薬剤はネズミ駆除にも役だったが、同時に、野鳥や飼い犬、ネズミ駆除のために放たれた猫も犠牲になってしまい、自然環境も壊し始める……。

 

そうなった時、ネズミは大挙して海を渡って行ってしまったと、物語には書かれている。

ネズミとの戦いに疲れ果てた島の人が田畑を耕すのをやめ、魚を捕るのをやめてしまい、毒薬により野にいる小動物も減ってしまっては、ネズミにとっては“おいしくない”状況になってしまったのだ。ネズミの数に対して食べ物の量が減ってしまい、共食いを始めたことにより数が減ってきたという要因もあるらしい。

また、今泉先生の分析のように、たとえネズミを捕らない猫だとしても、猫がたくさんいる島というのは、ネズミにとっては居心地が悪かったということもあっただろう。

ともあれ、戸島をはじめとする宇和島の島々は発生から7年ほどたって、ようやくネズミ被害から抜け出した。

 

このほか、ネットで「海の鼠」「戸島 ネズミ被害」などとキーワードを入れて調べてみると、いくつかの記事が出てくる。

昭和31年には、愛媛県宇和島海岸地方鼠族駆除対策委員会が『ねずみとのたたかい』という報告書も出しているようだ。

それによると、戸島と、同じようにネズミ被害で苦しんだ日振島の両島に導入された天敵動物は、へび191匹、イタチ156匹、猫にいたっては4392匹!

駆除したネズミは11年間で86万1871匹にものぼったそうだ。

想像を絶する数である。

そうしてネズミが去ったあと、島には猫が残った…というわけか。

 

猫をもとめて日本各地の“猫島”を旅している人のブログも見つけた。この戸島、今は猫の数は多くないようだ。どこの町にもいるくらいのノラネコ、程度だとか。

だから各地の猫島のような賑わいはないが、そのブログを読むと、普通で平和な暮らしが営まれている感じが伝わってくる。ネズミとの戦いが壮絶だっただけに、むしろ、そのほうがほっとする…ように思う。

また、ここまで壮絶な歴史はなくても、各地の猫島にはそれぞれ歴史があるのかもしれない。いつか猫島に行くことがあったなら、そういう島の歴史も調べながら、島も楽しみ、猫との触れ合いも楽しみたいなと思う。

海の鼠表紙 (472x500)

『海の鼠』吉村昭著/新潮社/昭和48年(1973)5月/表題小説の他に、映画化もされた「魚影の群れ」や、「蝸牛」「鵜」も収録

物語は、仲間の葬式の話から始まる。台風被害にあった漁師たちの葬式だ。

戦後、小さな島のなかで苦労して田畑を作り、漁に出て、生計をたててきた島民たち。毎年のように台風の被害もある。それでも、力強く生きてきた島民たちだったが、昭和24年にはじまったネズミの異常繁殖には完全にまいってしまったようだ。

考え得る、あらゆる手を講じたのに減らないネズミ。丹精込めた田畑も被害にあい続け、中には農業をやめてしまう者もあったという。

猛毒性の薬剤はネズミ駆除にも役だったが、同時に、野鳥や飼い犬、ネズミ駆除のために放たれた猫も犠牲になってしまい、自然環境も壊し始める……。

 

そうなった時、ネズミは大挙して海を渡って行ってしまったと、物語には書かれている。

ネズミとの戦いに疲れ果てた島の人が田畑を耕すのをやめ、魚を捕るのをやめてしまい、毒薬により野にいる小動物も減ってしまっては、ネズミにとっては“おいしくない”状況になってしまったのだ。ネズミの数に対して食べ物の量が減ってしまい、共食いを始めたことにより数が減ってきたという要因もあるらしい。

また、今泉先生の分析のように、たとえネズミを捕らない猫だとしても、猫がたくさんいる島というのは、ネズミにとっては居心地が悪かったということもあっただろう。

ともあれ、戸島をはじめとする宇和島の島々は発生から7年ほどたって、ようやくネズミ被害から抜け出した。

 

このほか、ネットで「海の鼠」「戸島 ネズミ被害」などとキーワードを入れて調べてみると、いくつかの記事が出てくる。

昭和31年には、愛媛県宇和島海岸地方鼠族駆除対策委員会が『ねずみとのたたかい』という報告書も出しているようだ。

それによると、戸島と、同じようにネズミ被害で苦しんだ日振島の両島に導入された天敵動物は、へび191匹、イタチ156匹、猫にいたっては4392匹!

駆除したネズミは11年間で86万1871匹にものぼったそうだ。

想像を絶する数である。

そうしてネズミが去ったあと、島には猫が残った…というわけか。

 

猫をもとめて日本各地の“猫島”を旅している人のブログも見つけた。この戸島、今は猫の数は多くないようだ。どこの町にもいるくらいのノラネコ、程度だとか。

だから各地の猫島のような賑わいはないが、そのブログを読むと、普通で平和な暮らしが営まれている感じが伝わってくる。ネズミとの戦いが壮絶だっただけに、むしろ、そのほうがほっとする…ように思う。

また、ここまで壮絶な歴史はなくても、各地の猫島にはそれぞれ歴史があるのかもしれない。いつか猫島に行くことがあったなら、そういう島の歴史も調べながら、島も楽しみ、猫との触れ合いも楽しみたいなと思う。