約20匹室内多頭飼い経験が10年強となりました。日中も生業として猫の様子を見守っているので、外でお仕事をしながらご家庭で多頭飼いをされている方より猫と接している述べ経験は多いかもしれません。猫と言語コミュニケーションが出来ないだけに、職業柄、毎日猫が何を求めているのかを観察し読み取ろうと心掛けています。
お客様と会話をしていると、猫は(流れる)水が嫌いですよねとか、猫は抱っこしても平気ですよねとか、猫はお尻をポンポンと叩くと喜びますよねなど、自身の飼い猫との経験を基準として猫を理解している方が時々いらっしゃいます。猫も人間と同様、個々で性格や嗜好が異なるので猫はこうだ、と決めるのは早計です。
先日馴染みのお客様が、うちの猫は色々試してみた結果、お風呂の温度で流れる温水のみを好んで飲むのです、とお話しされました。飼い猫の細かな要望を理解しようとするお客様の姿勢にとても嬉しくなりました。ちなみに当店のくるみちゃんは、「お水を流して!温水はダメよ!冷たい水にして!」と手洗い場から時々大声で呼んで要望します。
多頭飼いをしていても同じです。自身の猫たちに喧嘩があったりし仲良くなれず個々に別々に過ごすなどが日常であった場合、猫は集団行動が得意ではないから仕方ないと思われるかもしれません。反対に当店でしか猫を知らないお客様は、多くの人や猫と交流してきた猫は人に懐き、(暑い季節でなければ)猫同士一緒に仲良くお膝に乗るもの、と勘違いされたりもします。防衛本能から猫は本来見知らぬ人のお膝には落ち着けず乗りません。当店の猫たち全てがおかしいだけなのです。私自身もそうですが、人は自身が経験した事がスタンダードだと思い込みがちなので気をつけなければなりません。
ちなみに室内での多頭飼いですが、子猫からその環境にいる場合はじゃれ合いながら喧嘩の間合いを掴み、成猫になっても喧嘩も殆ど無く平和に仲良く過ごせる事が多いようです。一方では1才以上他所で育った猫はその期間の生活癖がついて、別所の多頭飼いの中に入ると自分の思う通りの生活が出来ない為、他の猫たちと慣れずにストレスが溜まる状態になり易く、飼い主以外の人に懐くどころでは無いようです。その場合は多頭飼いではなく単独飼いで飼い主さんに愛され暮らす事がその猫にとってはきっと幸せなのでしょう。
猫を客観的に見ようという事で過去に何冊か猫関連のマニュアル本を読んだ事があります。私見ですが、猫の病気も含め、猫に関してはまだまだ知られていない事柄が沢山あるようです。
市販の猫マニュアル本に書いてない猫の習性を一つあげます。4~5年前から当店のブログでたまに掲載している内容ですので、もしかしたら今はどこかに記載されているかもしれませんがご容赦ください。
猫が猫をグルーミングしている姿は可愛いですね。当店でククちゃんが母猫になりきり、ざらめちゃんを子猫として舐めて可愛がっている、プリンちゃんがシロンちゃんに親愛を込めて舐めてあげるのを観るのはとても癒されます。
実はその他に猫が猫を舐める理由があるのです。舐めている猫が舐められている猫にその場所を譲って欲しいという理由です。しつこく舐められた猫は仕方なくその場を去り、その退いた場所に舐めていた猫が居座ります。これは猫の平和的交渉術なのです。私一人では気づきませんでしたが、お客様とお話ししていてそれがわかりました。一般的には、ボス猫マンタのように威嚇で居場所を強奪する猫は多いのかもしれません。子猫から慣れていて毎日のご飯が約束された室内での多頭飼いでは、力関係がほぼ均等の猫たちの間でその交渉行為が行われるようです。
人は思い込みから信念が生まれ、そのパワーは周囲の人をも巻き込み素晴らしい事を成す事が出来ます。反面、思い込みは人を愚者や悪者に仕立てあげることもあり不運にも傷付けてしまうこともあるでしょう。そんな時は猫好きならば、猫たちを見習い平和的交渉術で問題を解決していければと願う次第です。
さて、シロンちゃんですが、くっついて来て覆いかぶさってきたプリンちゃんが重いので退いて欲しくてしつこく舐めています。プリンちゃんは大好きなシロンちゃんに何回も一生懸命舐められ、ご満悦で動こうとしません。人だけではなく、どうやら猫も(シロンちゃんに好かれているという)思い込みが強いと誤解してしまう事があるようですね。(笑)