猫好きのみなさんは「猫雑誌」と聞くと、どんな雑誌を思い浮かべますか?有名どころだと「ねこのきもち(ベネッセ)」や「猫びより(辰巳出版)」ですよね。

え?
「ネコDK」?
ええ!?
「ねこもえ」?

もし、これらの雑誌(正確に言うとムックです)が頭に浮かんだようでしたら、心よりお礼申し上げます。2冊ともワタクシめが手がけております。

筆者は10年ほど前から猫の雑誌を制作しています。まれに特集のみ担当、写真のみ担当ということもありますが、大半は1冊丸ごと作っています。

当然ですが、猫の雑誌を出版するには、まず企画を考えなければなりません。もちろん「カワイイ猫の本作ります」程度では、企画会議は通りません。猫好きに訴求できるテーマや切り口を考え、出版社の企画会議で賛同を得て、さらに上層部の承認を得る必要があります。

「いける! これは絶対売れる!」と思って出版社に売り込んでも、つれない猫のごとくプイッとそっぽを向かれることも……。しかし、その企画を別の出版社に提案したら出版が決まり、しかも売れることもあるので、世の中わからないものです。

さて、出版が決まったら版元の編集者と何度も打ち合わせをして、内容を固めていきます。どんな猫を取り上げるのか、どんなデザインにするのか、いつも侃々諤々の議論になります。猫雑誌を読む方の大半は女性(とくに30代~60代が多い)なので、その方たちに支持される誌面を考えます。

より良い猫雑誌を作るために打ち合わせを重ねます(写真はイメージです)

個人的にもっとも楽しく、やりがいのある作業は、“取材”です。話題の猫のお宅を訪ねることもあれば、猫の多い離島に足を運んだり、動物病院で獣医師にインタビューをしたりすることもあります。取材は筆者が撮影もインタビューも行うパターンと、撮影をカメラマンに任せるパターンがあります。

ちなみに一般家庭の猫を取材する場合、「行ったけど撮れませんでした」は避けたいので、極端に人見知りの猫を取材することはありません。“ちょっと人見知り”くらいであれば大丈夫。

猫の多くは“野次馬”的な一面があるもので、飼い主さんとしばらくお話をしていると、ひょっこり姿を現します。この時、急にカメラを持ってバシャバシャ撮るようなことはしません。すべての動作をゆっくりと行い、猫を驚かせないようにして撮影をスタートします。

撮影は猫のペースで行います。モデルは海苔君。

こうして取材を終えたら、撮った写真のなかから誌面に掲載するものを選定します。優先順位は基本的に「猫の表情・ポーズ」→「画質」→「構図」です。瞳孔が開いていたり耳が横を向いていたりと、猫が撮影者に対して警戒していることがわかるような写真は使いません。
そもそも猫は容姿がかわいいので、“かわいい写真”を撮ることは難しくありません。猫好きの方のツボをくすぐるのは「かわいさ」+「おもしろさ」なので、できるだけその両輪が揃った写真を掲載するように努めています。

掲載する写真を絞り込んだら、「ラフ」を書きます。デザイナーはこのラフを見ながら、レイアウトを作ります。自分が作ったラフがどのようにデザインされているかーーレイアウトを見る時は、いつも胸が高鳴ります。

デザイナーに渡すラフ。

実際の誌面。

レイアウトが決まったら、執筆です。筆者は編集者兼ライターなので、多くの場合、自分で原稿を書いています。自宅で執筆していると、お約束のごとく一緒に暮らしている猫が邪魔をしてきます。原稿に行き詰まると、猫の背中に顔を埋めるのが自分なりのリフレッシュ方法なのですが、猫からは嫌がられています。
よく「猫の雑誌を作っている」と話すと、「いいなあ。癒されそう」なんて言われるのですが、締切間近は癒されるどころか「猫地獄だ……」なんてつぶやいています。

邪魔だっつーの。でもかわいい。

原稿が完成したら、それをデザイナーに渡し、レイアウトにはめ込んでもらいます。
少し前「校閲ガール」という漫画原作のドラマが話題になりましたが、現在、「校閲部」のある出版社は一部。多くの場合、制作に携わった編集者やライター、外部の校正会社などが誤りがないかチェックします。

そしてすべてのページの校閲が終わると、印刷所にデータを渡します。数日すると「色校」と呼ばれる仮刷りが出てきて、猫の被毛の色などをチェックし、問題がある場合は印刷所に調整をお願いします。

猫の写真は多少黄みがかっても「温かい」雰囲気が出るのでOKなのですが、黒っぽかったり青っぽかったりすると「暗い」「冷たい」印象になるので必ず色を調整します。色校が終わると「校了」となり、後は発売を待つだけ。

色校で写真の明るさや色味をチェック。

じつは筆者、ゴルフや歴史関係の本も制作しているのですが、とくに愛着が沸くのはやっぱり猫の本。自身が考えたフキダシを目にしてほくそ笑んだり、逆に「なぜこんなにつまらない文言にしてしまったのか!」なんて後悔したり……いつもそんな風に自分が手がけた猫雑誌を眺めています。

 

著者:奥田直樹

猫好きのみなさんは「猫雑誌」と聞くと、どんな雑誌を思い浮かべますか?有名どころだと「ねこのきもち(ベネッセ)」や「猫びより(辰巳出版)」ですよね。

え?
「ネコDK」?
ええ!?
「ねこもえ」?

もし、これらの雑誌(正確に言うとムックです)が頭に浮かんだようでしたら、心よりお礼申し上げます。2冊ともワタクシめが手がけております。

筆者は10年ほど前から猫の雑誌を制作しています。まれに特集のみ担当、写真のみ担当ということもありますが、大半は1冊丸ごと作っています。

当然ですが、猫の雑誌を出版するには、まず企画を考えなければなりません。もちろん「カワイイ猫の本作ります」程度では、企画会議は通りません。猫好きに訴求できるテーマや切り口を考え、出版社の企画会議で賛同を得て、さらに上層部の承認を得る必要があります。

「いける! これは絶対売れる!」と思って出版社に売り込んでも、つれない猫のごとくプイッとそっぽを向かれることも……。しかし、その企画を別の出版社に提案したら出版が決まり、しかも売れることもあるので、世の中わからないものです。

さて、出版が決まったら版元の編集者と何度も打ち合わせをして、内容を固めていきます。どんな猫を取り上げるのか、どんなデザインにするのか、いつも侃々諤々の議論になります。猫雑誌を読む方の大半は女性(とくに30代~60代が多い)なので、その方たちに支持される誌面を考えます。

より良い猫雑誌を作るために打ち合わせを重ねます(写真はイメージです)

個人的にもっとも楽しく、やりがいのある作業は、“取材”です。話題の猫のお宅を訪ねることもあれば、猫の多い離島に足を運んだり、動物病院で獣医師にインタビューをしたりすることもあります。取材は筆者が撮影もインタビューも行うパターンと、撮影をカメラマンに任せるパターンがあります。

ちなみに一般家庭の猫を取材する場合、「行ったけど撮れませんでした」は避けたいので、極端に人見知りの猫を取材することはありません。“ちょっと人見知り”くらいであれば大丈夫。

猫の多くは“野次馬”的な一面があるもので、飼い主さんとしばらくお話をしていると、ひょっこり姿を現します。この時、急にカメラを持ってバシャバシャ撮るようなことはしません。すべての動作をゆっくりと行い、猫を驚かせないようにして撮影をスタートします。

撮影は猫のペースで行います。モデルは海苔君。

こうして取材を終えたら、撮った写真のなかから誌面に掲載するものを選定します。優先順位は基本的に「猫の表情・ポーズ」→「画質」→「構図」です。瞳孔が開いていたり耳が横を向いていたりと、猫が撮影者に対して警戒していることがわかるような写真は使いません。
そもそも猫は容姿がかわいいので、“かわいい写真”を撮ることは難しくありません。猫好きの方のツボをくすぐるのは「かわいさ」+「おもしろさ」なので、できるだけその両輪が揃った写真を掲載するように努めています。

掲載する写真を絞り込んだら、「ラフ」を書きます。デザイナーはこのラフを見ながら、レイアウトを作ります。自分が作ったラフがどのようにデザインされているかーーレイアウトを見る時は、いつも胸が高鳴ります。

デザイナーに渡すラフ。

実際の誌面。

レイアウトが決まったら、執筆です。筆者は編集者兼ライターなので、多くの場合、自分で原稿を書いています。自宅で執筆していると、お約束のごとく一緒に暮らしている猫が邪魔をしてきます。原稿に行き詰まると、猫の背中に顔を埋めるのが自分なりのリフレッシュ方法なのですが、猫からは嫌がられています。
よく「猫の雑誌を作っている」と話すと、「いいなあ。癒されそう」なんて言われるのですが、締切間近は癒されるどころか「猫地獄だ……」なんてつぶやいています。

邪魔だっつーの。でもかわいい。

原稿が完成したら、それをデザイナーに渡し、レイアウトにはめ込んでもらいます。
少し前「校閲ガール」という漫画原作のドラマが話題になりましたが、現在、「校閲部」のある出版社は一部。多くの場合、制作に携わった編集者やライター、外部の校正会社などが誤りがないかチェックします。

そしてすべてのページの校閲が終わると、印刷所にデータを渡します。数日すると「色校」と呼ばれる仮刷りが出てきて、猫の被毛の色などをチェックし、問題がある場合は印刷所に調整をお願いします。

猫の写真は多少黄みがかっても「温かい」雰囲気が出るのでOKなのですが、黒っぽかったり青っぽかったりすると「暗い」「冷たい」印象になるので必ず色を調整します。色校が終わると「校了」となり、後は発売を待つだけ。

色校で写真の明るさや色味をチェック。

じつは筆者、ゴルフや歴史関係の本も制作しているのですが、とくに愛着が沸くのはやっぱり猫の本。自身が考えたフキダシを目にしてほくそ笑んだり、逆に「なぜこんなにつまらない文言にしてしまったのか!」なんて後悔したり……いつもそんな風に自分が手がけた猫雑誌を眺めています。

 

著者:奥田直樹