(其の壱)では、猫の難治性の病気やいろいろな症状に対してホリスティックケアが注目されてきた、ということをお話ししました。でも、そもそも「ホリスティックケアってなに?」と思われる方もいらっしゃると思います。そこで(其の弐)では、ホリスティックケアの発祥やどのような治療方法なのか、などについてお話しさせていただこうと思います

ホリスティックケアの概念は、ヒポクラテスから始まった

ホリスティックケアという概念は、ギリシャ時代にその祖をみます。かのヒポクラテスが、それまで経験的に行なわれていた医療を体系化し、更に病気に対する独自の考え方を加味して医学として体系づけたものです。それは、病気を単に特定の部位(臓器)の不具合とは考えずに、「患部は常に身体全体であり、環境や食事の乱れなどが病気をひきおこす」という考え方でした(この考え方はヒポクラテス派、またはコス派と呼ばれます)。

ヒポクラテスの理論を具体的にみてみましょう

ヒポクラテスは、身体が常に安定している状態が健康であるとしました。これは、今の言葉でいう『生体恒常性』です。そして、この生体恒常性を保つために一番大切なのが『自然治癒力』であるとしました。

ヒポクラテスは、自然という概念をとても大切にしました。その一つは、病因としての自然です。ヒトを始めとした生けとし生けるものは全て、水や風、火、土といった自然の力に影響されるという考えです。そしてその病因を「温と令」「湿と乾」に大別しました。

ヒポクラテスが注目したもう一つの自然は、治療としての自然です。ヒポクラテスは、病気に対する治療を、やはり自然に求めました。その主な治療方法は『食餌』でした。温(熱がたまっている状態)のときには冷ますものを、湿(滞っている状態)のときには乾かす(流す)効果のあるものを食する事をすすめました。この場合の食餌では各種の植物が大切な役割を果たしていて、約400種類の植物を、いわゆる現代の薬のように使用していました。

それぞれの身体の状態や症状に合った食餌をすることよってヒトが生まれ持っている自然治癒力をひきだして(生体恒常性を保つ働きを促して)病気を治す、言い換えれば、自然治癒力こそが全てに勝る治療家であり、それを補うために食餌による治療を行なう、という方法論です。

現代医療に大きな影響を与えたヒポクラテス派とクドニス派

このヒポクラテス派に対し、クドニス派という考え方もありました。これは、「身体のどこが悪いのか」という様に病気の原因を細分化し、「特定の部位(臓器)が不具合を起こしているのが病気である」という考え方でした。

ギリシャ時代に発祥したヒポクラテス派とクドニス派という二つの医療の考え方ですが、これらの考え方は現代医療にも大きな影響を与えています。特にクドニス派の「特定の部位(臓器)」に病因をみて治療をするという方法は、19世紀以降の解剖学や化学の進歩とともに大いなる発展を遂げ、現代の西洋医学的な治療につながっています。これは私たちの健康な生活に計り知れない貢献をし、我々人類の飛躍的な寿命の伸びにつながりました。

ヒポクラテス派の医学も、現代医療に大きな功績を残しています。それは『薬』です。治療としての食餌のなかでは各種の植物が大きな役割を果たしていた、とお話ししました。18世紀後半に、これら治療に使われていた植物の成分分析と"有効な成分だけ"を化学的に合成する方法が確立されて、現代の薬の誕生へとつながったのです。

photo02_西洋医学と薬

近年注目され始めたヒポクラテス派医学とホリスティックケア

しかしながら、寿命の伸びとともに厄介な現象も現われてきました。それは、現代医療(西洋医学を中心とした医療)だけでは治すことが出来ない病気や原因不明の症状などが多くみられるようになってきた、ということです。そこで見直され始めたのがヒポクラテス派的な医学、つまり「特定の部位(臓器)」のみに病因を求めるのではなく、「身体全体をみる」という考え方です。

そのなかで、それまで伝統医療として現代医療と一線をひかれていた治療方法なども見直され、体系化してまとめられました。そうして生まれたのがホリスティックケアという概念なのです。これらの中には、中国を発祥とする中医学、インドのアーユルベーダ、西洋を発祥とするハーブによる治療方法、などが含まれます。

特に"有効な成分だけ"を化学的に合成して作られた薬に対して、植物全体を摂取する方法(植物療法、メディカルハーブなど)があらためて注目され始めたことは、特筆すべきことでしょう。

photo03_ラベンダーと猫

ホリスティックケアの語源はギリシャ語のホロス(Holos = 全体)という言葉で、英語ではHolistic(全体的な)Careとよびます。このことからも、ホリスティックケアがギリシャ時代の医学に大きな影響を受けていることがうかがえますね。

さて、こうして再度注目され始めた、身体全体をみる治療方法であるホリスティックケアですが、では、猫のためのホリスティックケアとは具体的にはどのようなものなのでしょうか。次回は、猫のためのホリスティックケアについてお話をさせていただこうと思います。

(其の壱)では、猫の難治性の病気やいろいろな症状に対してホリスティックケアが注目されてきた、ということをお話ししました。でも、そもそも「ホリスティックケアってなに?」と思われる方もいらっしゃると思います。そこで(其の弐)では、ホリスティックケアの発祥やどのような治療方法なのか、などについてお話しさせていただこうと思います

ホリスティックケアの概念は、ヒポクラテスから始まった

ホリスティックケアという概念は、ギリシャ時代にその祖をみます。かのヒポクラテスが、それまで経験的に行なわれていた医療を体系化し、更に病気に対する独自の考え方を加味して医学として体系づけたものです。それは、病気を単に特定の部位(臓器)の不具合とは考えずに、「患部は常に身体全体であり、環境や食事の乱れなどが病気をひきおこす」という考え方でした(この考え方はヒポクラテス派、またはコス派と呼ばれます)。

ヒポクラテスの理論を具体的にみてみましょう

ヒポクラテスは、身体が常に安定している状態が健康であるとしました。これは、今の言葉でいう『生体恒常性』です。そして、この生体恒常性を保つために一番大切なのが『自然治癒力』であるとしました。

ヒポクラテスは、自然という概念をとても大切にしました。その一つは、病因としての自然です。ヒトを始めとした生けとし生けるものは全て、水や風、火、土といった自然の力に影響されるという考えです。そしてその病因を「温と令」「湿と乾」に大別しました。

ヒポクラテスが注目したもう一つの自然は、治療としての自然です。ヒポクラテスは、病気に対する治療を、やはり自然に求めました。その主な治療方法は『食餌』でした。温(熱がたまっている状態)のときには冷ますものを、湿(滞っている状態)のときには乾かす(流す)効果のあるものを食する事をすすめました。この場合の食餌では各種の植物が大切な役割を果たしていて、約400種類の植物を、いわゆる現代の薬のように使用していました。

それぞれの身体の状態や症状に合った食餌をすることよってヒトが生まれ持っている自然治癒力をひきだして(生体恒常性を保つ働きを促して)病気を治す、言い換えれば、自然治癒力こそが全てに勝る治療家であり、それを補うために食餌による治療を行なう、という方法論です。

現代医療に大きな影響を与えたヒポクラテス派とクドニス派

このヒポクラテス派に対し、クドニス派という考え方もありました。これは、「身体のどこが悪いのか」という様に病気の原因を細分化し、「特定の部位(臓器)が不具合を起こしているのが病気である」という考え方でした。

ギリシャ時代に発祥したヒポクラテス派とクドニス派という二つの医療の考え方ですが、これらの考え方は現代医療にも大きな影響を与えています。特にクドニス派の「特定の部位(臓器)」に病因をみて治療をするという方法は、19世紀以降の解剖学や化学の進歩とともに大いなる発展を遂げ、現代の西洋医学的な治療につながっています。これは私たちの健康な生活に計り知れない貢献をし、我々人類の飛躍的な寿命の伸びにつながりました。

ヒポクラテス派の医学も、現代医療に大きな功績を残しています。それは『薬』です。治療としての食餌のなかでは各種の植物が大きな役割を果たしていた、とお話ししました。18世紀後半に、これら治療に使われていた植物の成分分析と"有効な成分だけ"を化学的に合成する方法が確立されて、現代の薬の誕生へとつながったのです。

photo02_西洋医学と薬

近年注目され始めたヒポクラテス派医学とホリスティックケア

しかしながら、寿命の伸びとともに厄介な現象も現われてきました。それは、現代医療(西洋医学を中心とした医療)だけでは治すことが出来ない病気や原因不明の症状などが多くみられるようになってきた、ということです。そこで見直され始めたのがヒポクラテス派的な医学、つまり「特定の部位(臓器)」のみに病因を求めるのではなく、「身体全体をみる」という考え方です。

そのなかで、それまで伝統医療として現代医療と一線をひかれていた治療方法なども見直され、体系化してまとめられました。そうして生まれたのがホリスティックケアという概念なのです。これらの中には、中国を発祥とする中医学、インドのアーユルベーダ、西洋を発祥とするハーブによる治療方法、などが含まれます。

特に"有効な成分だけ"を化学的に合成して作られた薬に対して、植物全体を摂取する方法(植物療法、メディカルハーブなど)があらためて注目され始めたことは、特筆すべきことでしょう。

photo03_ラベンダーと猫

ホリスティックケアの語源はギリシャ語のホロス(Holos = 全体)という言葉で、英語ではHolistic(全体的な)Careとよびます。このことからも、ホリスティックケアがギリシャ時代の医学に大きな影響を受けていることがうかがえますね。

さて、こうして再度注目され始めた、身体全体をみる治療方法であるホリスティックケアですが、では、猫のためのホリスティックケアとは具体的にはどのようなものなのでしょうか。次回は、猫のためのホリスティックケアについてお話をさせていただこうと思います。