当店は保護猫活動をしていない一般的な猫カフェです。エンターテイメントをご提供し、営利をいただいているお店です。だからこそ、お越しいただいたお客さまには期待した以上の満足をご提供することに専念しなければなりません。猫たちと一緒に路頭に迷うことは避けたいからです。
昨年の2016年に、当店カフェニャンズが3匹も亡くなりました。しかし、経営者として悲しみを引きずり、猫数減少のまま放置するわけにはいきません。多過ぎず少な過ぎずバランスを考慮し、お客さま満足度を追求しなければなりません。生駒でお世話になったブリーダーさんは移転前に廃業されたため、以前のように程良い時に突然訳ありの子猫がやって来ることはありません。自身で探し子猫を迎え入れなければなりません。
果たしてブリティッシュショートヘアの子猫のコロンをペットショップから迎え入れました。そのお店ではブリーダーもされていて、産まれた時から母猫と一緒に大切に育てられた様子でした。最低でも500gにならないとお引き渡しは出来ないというお店の基準があるようで、1週間ほど待ちました。小さいコロンは当店の過去のどの子猫の時よりもしっかりした身体付きになり、生後70日齢(※1)で600gの大きさになって、当店カフェニャンズの仲間入りを果たしました。
さて、生駒から心斎橋に移転する1年前の2013年、保健所に収容されている猫のことで、当店担当保健所の職員さんに相談したことがあります。殺処分される前の子猫を一匹ずつ当店で引き取りながら順次、里親探しをすることはできないだろうか?と。当時、奈良県初の猫カフェということもあり、開店当初より私の名前も覚えていただき、気にかけていただいたそれなりの役職の職員さんです。
「お申し出は大変ありがたいのですが、残念ながら県内にはさまざまな団体さまがあり、今、キャットテイルさんだけを特別扱いするわけにはいかないのです」とのことでした。「もしかしたら県内で協議(※2)され、将来可能になるかもしれないですが…」ともおっしゃっていましたが、言外に高いハードルがあることを察すると同時に、予想外の回答に少し驚きました。そして私を傷付けないように言葉を選んでご説明くださった職員さんの配慮にも感謝しました。例え1匹ずつとはいえ、周りの協力者も無しに安易にするべきではない、営利活動を主としながら片手間で保護猫活動をすることは、それを真摯に取り組んでいる方々に対して、大変失礼なことではないか?とも思いました。
阪神大震災で被災後、気づいたことがあります。私を護るご先祖さまからのメッセージは、時々人の口を借りて伝えてくるということです。果たしてそれは私の進むべき道では無いとの導きを感じ、お客さまと店内猫たちの幸福感を追求するお店の今があります。
あと生体販売等の是非についてはさまざまなご意見ありますが、現在日本の法律によって許可されているので割愛します。ただし、猫を愛する全ての皆さんが共通していること、そして動物愛護管理法でも定められていることは、猫を悪環境で育てたり、粗末に扱ったり、終身飼養せず安易に見捨てたりする全ての飼育者は業態を問わず、なくすべき対象であるということは申し上げなければならないでしょう。
当店にお越しになると、血統書のある猫だからお膝乗りするのだと思われる方もいらっしゃるかもしれません。私は震災で実家が全壊するまで、雑種猫(不完全室内飼い)ばかり、約30年間で計6匹を1匹ずつ飼っていました。布団の中に入り込んだり、起きると足上や顔前で寝たりと個々に異なりましたが、全ての猫たちは私に懐きました。どんな猫でも飼い主が適切に接してさえすれば(例え時間がかかったとしても)、お膝乗りや足乗りをする可能性がとても高いことをここで追記しなければなりません。当店は上記の理由などがあり、保護猫を迎え入れることはないでしょう。ただ、終生飼養の心構えや、飼養規定条件などが揃っている方なら、トライアル期間があったりする保護猫を迎え入れるのも素敵な選択肢だと存じます。
里親を探すまでの一時的保管の役割を果たす保護猫カフェさんとは異なり、当店のような人や猫の多いスペースで一生を幸せに過ごすには、コロンの様な物怖じしない性格の猫が最適だと思っています。さらには、お客さまと猫たちの幸せな空間を追求した結果、自主的にお膝乗りをする猫ばかりいる空間にたどり着きました。長年かけてお客さまと共に作り上げた「お膝乗り猫カフェ」の継続維持のためにも、先輩猫に配慮し、慎重に子猫を迎え入れなければならない使命を自ら背負うことになってしまったのです。
さて、当のコロンは男の子だからでしょうか、小さな身体でも大きな先輩猫に突進していきます。先輩猫も最初は逃げ気味でしたが、最近は兄貴分のポテトや姉貴分のボンボンがコロンの遊び相手となっています。そして先輩猫から学んだのかコロンは眠くなるとお客さまのお膝へそろりと上り、そのまま寝てしまうお膝乗り猫に成長しました。最初は「何だ、この子猫は?」と思われ半数の猫から警戒されていたコロンですが、みんなと同じ行動をすることで安心され、今ではすっかり先輩猫スタッフたちと打ち解けています。
※1:環境省の守るべき基準では45日齢超過より子猫の販売は可能となります。
※2:動物愛護管理法の下、都道府県別で詳細部分の規約が異なります。