前回は、そもそも「腫瘍」ってなんだ?というお話をいたしました。
「腫瘍」とは、組織や細胞が体内で過剰に増殖したもの。その中で、正常な組織を圧迫して正常な働きを妨げたり、血流を介して他の臓器に転移するものが「悪性腫瘍」すなわち「がん」と呼ばれます。・・・というのが基本中の基本なのですが、この記述は実は少し正確性に欠けます。
正確に言うと、「悪性腫瘍」はさらに2つに分類されます。生き物の体のパーツを「上皮」と「上皮以外」にわけ、そのどちらに悪性腫瘍ができたのかという点での分類です。上皮系悪性腫瘍を「がん」と呼び、非上皮系悪性腫瘍のことは「肉腫」と呼ばれます。
上皮とは皮膚の表面や乳腺、胃の粘膜などを指します。なので「皮膚がん」「乳がん」「胃がん」といいます。
上皮以外の組織は骨、筋肉、血液など。なので「骨肉腫」「リンパ肉腫(悪性リンパ腫)」といいます。
ただ、この分類は非常にややこしいので、すべてをひとまとめにして「がん」と通称することも多いです。
皮膚、乳腺、リンパは猫でも腫瘍ができやすい部位です。
皮膚にできるものは「扁平上皮癌」「黒色腫(メラノーマ)」「線維肉腫」などがあります。外側から触ってしこりがわかるものがほとんどなので、家での毎日のスキンシップが早期発見への一番の近道です。もっとも、口の中にできるものなどはなかなか気づくのが難しく、発見したときにはかなり進行していることが多いのが悩ましいところです。口の中や耳の中なども、たまには隅々まで観察することをおすすめします。乳腺の腫瘍は避妊手術をしていない猫での発生が多いので、若いうちに(生後半年ぐらいを目安に)避妊手術をしてあげると安心です。
リンパの腫瘍は「血液のがん」などとも呼ばれますが、体表にあるリンパ節が腫れて気づくこともあれば、血液検査で血中の白血球に異常があって気づく場合もあります。猫白血病ウイルス(FeLV)や猫免疫不全ウイルス(FIV)といったウイルスが関与していることがあるので、これらのウイルス感染を防ぐことももちろん重要です。野良猫との接触を防ぎ、特にケンカや濃厚接触は絶対に避けましょう。新たな猫を迎え入れるときには、ウイルスに感染していないか調べる血液検査を欠かさず行い、万が一感染していた場合は隔離など適切な対処をとります。
腫瘍の一番やっかいな点は、「予防できない」ということではないかと思います。高齢になってきたら特に、定期的な健康チェックを欠かさないことが一番の予防といえるのではないでしょうか。ちなみに豆知識ですが、猫においても受動喫煙は有害だそうで、リンパ腫のリスクが2.4倍に増えるというデータがあります。タバコの煙にはなるべく触れさせないようにしましょう。
著者:谷口史奈
前回は、そもそも「腫瘍」ってなんだ?というお話をいたしました。
「腫瘍」とは、組織や細胞が体内で過剰に増殖したもの。その中で、正常な組織を圧迫して正常な働きを妨げたり、血流を介して他の臓器に転移するものが「悪性腫瘍」すなわち「がん」と呼ばれます。・・・というのが基本中の基本なのですが、この記述は実は少し正確性に欠けます。
正確に言うと、「悪性腫瘍」はさらに2つに分類されます。生き物の体のパーツを「上皮」と「上皮以外」にわけ、そのどちらに悪性腫瘍ができたのかという点での分類です。上皮系悪性腫瘍を「がん」と呼び、非上皮系悪性腫瘍のことは「肉腫」と呼ばれます。
上皮とは皮膚の表面や乳腺、胃の粘膜などを指します。なので「皮膚がん」「乳がん」「胃がん」といいます。
上皮以外の組織は骨、筋肉、血液など。なので「骨肉腫」「リンパ肉腫(悪性リンパ腫)」といいます。
ただ、この分類は非常にややこしいので、すべてをひとまとめにして「がん」と通称することも多いです。
皮膚、乳腺、リンパは猫でも腫瘍ができやすい部位です。
皮膚にできるものは「扁平上皮癌」「黒色腫(メラノーマ)」「線維肉腫」などがあります。外側から触ってしこりがわかるものがほとんどなので、家での毎日のスキンシップが早期発見への一番の近道です。もっとも、口の中にできるものなどはなかなか気づくのが難しく、発見したときにはかなり進行していることが多いのが悩ましいところです。口の中や耳の中なども、たまには隅々まで観察することをおすすめします。乳腺の腫瘍は避妊手術をしていない猫での発生が多いので、若いうちに(生後半年ぐらいを目安に)避妊手術をしてあげると安心です。
リンパの腫瘍は「血液のがん」などとも呼ばれますが、体表にあるリンパ節が腫れて気づくこともあれば、血液検査で血中の白血球に異常があって気づく場合もあります。猫白血病ウイルス(FeLV)や猫免疫不全ウイルス(FIV)といったウイルスが関与していることがあるので、これらのウイルス感染を防ぐことももちろん重要です。野良猫との接触を防ぎ、特にケンカや濃厚接触は絶対に避けましょう。新たな猫を迎え入れるときには、ウイルスに感染していないか調べる血液検査を欠かさず行い、万が一感染していた場合は隔離など適切な対処をとります。
腫瘍の一番やっかいな点は、「予防できない」ということではないかと思います。高齢になってきたら特に、定期的な健康チェックを欠かさないことが一番の予防といえるのではないでしょうか。ちなみに豆知識ですが、猫においても受動喫煙は有害だそうで、リンパ腫のリスクが2.4倍に増えるというデータがあります。タバコの煙にはなるべく触れさせないようにしましょう。
著者:谷口史奈