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猫社員が活躍する会社とは?株式会社qnote 代表取締役・鶴田展之さん

猫たちも立派な社員の一員、そして求人を行う際の応募資格は「猫が好きなこと」。そんなユニークな方針で業務を行っているのが東京都台東区の株式会社qnoteです。テレビ番組や雑誌の猫特集、あるいは猫やペットに関するウェブサイトの記事などでもよく取り上げられており、既にご存じの方も多いかもしれませんね。

主な事業内容はスマートフォン向けのアプリケーションやソフトウェア開発等で、一見すると猫とは全く無関係。そんな同社が猫社員を受け入れることになった経緯とは。そして彼らは日々どのように過ごしているのでしょうか。代表取締役の鶴田展之さんにお話を伺ってみました。

鶴田:当社は2003年7月の設立ですが、立ち上げた当初の頃にメンバー4人でお寿司屋さんにお昼を食べに行った際、猫の里親募集の貼り紙があったんですよ。それで「猫かわいいよね。もらって帰ろうか」という話になり、迎え入れることになったのがそもそものきっかけです。

―ほぼ即決だったのですね。個人でなくあくまで会社で受け入れる、という決断に至ったのがちょっと驚きです。

鶴田:普通の会社ならブレーキがかかってしまうところですが、私を含む4人のメンバーは元々以前別の会社にいた仲間同士で、その頃から比較的ゆるい雰囲気で仕事をしていました。もちろん全員が猫好きだったこともあり、それで「会社に猫がいてもいいよね」というような柔軟な発想と決断ができたのだと思います。

鶴田:受け入れた猫は、そのお寿司屋さんの店名からとって「ふたば」という名前にしました。実は初日からいきなり脱走してしまって、お腹が空いたのか結局そのお寿司屋さんに帰っていたようで無事に見つかったのですが、その時は本当にびっくりしましたね。

―ふたばさんはどんな猫ですか。

鶴田:クリーム色の独特な毛色をした雌猫で、もうみんなのアイドルですね。抱っこを嫌がらず、甘えるのも遊ぶのも上手な子です。

―その後、さらに猫社員が増えていったそうですね。

鶴田:社員の一人が飼っていたたび助という雄猫がいたのですが、ときどき会社に連れてきてもらったりしていました。それで当時はふたばもたび助も避妊去勢手術をしていなかったので「子どもができたら面白いよね」と話していたら、本当にできてしまった。4匹くらいならもちろんはじめから面倒をみるつもりだったのですが、ふたばはなんと6匹も産んだんです。男の子と女の子が3匹ずつで、男の子は茶トラ、女の子がグレーの毛色をしていました。その後も社員が保護した猫が加わったり、あるいは引き取ってもらったりして、現在は7匹の猫社員が在籍中です。

―彼らは普段どのように過ごしていますか。7匹もいると面倒をみるのもなかなか大変なのでは。

鶴田:ご覧の通り猫社員はオフィスのフロアやデスクの上を歩き回ったり、猫ベッドでくつろいだり、それぞれマイペースで自由にしています。今は人間の社員も18人いますので、普段は交代でお世話をしていますね。朝に早く来てもらってごはんをあげたり、トイレを掃除したり。休みの日も誰かが来て面倒をみるという感じです。

―彼らの働きぶりはどうでしょう。それと猫社員の動向が気になって人間の社員の仕事が進まないということはありませんか。

鶴田:私たちももちろん癒されますが、やっぱり猫がいると来社するお客様も喜ぶし和むんですね。それで「営業マンみたいなものだし、営業部にしよう」ということになりました。もうみんな大人の猫たちなので、朝と夕方のごはんの時はとても賑やかですが、それ以外は基本的にのんびりしています。ときどき追いかけっこをしたりもしていますが、仕事を邪魔されるというような感覚はほとんどありません。

―facebookページでも彼らの日常や魅力的な写真がよくアップされていますね。

鶴田:あれは特に担当者が決まっているわけではなく、面白い写真が撮れたら社員が随時更新するようにしています。おかげさまでメディアにもよく取り上げて頂いた影響か、求人への問い合わせも多いですよ。それで入社したスタッフも何人かいますし。

―猫社員の中でも特にインパクトの強い子はいますか。

鶴田:みるくという茶トラの猫はとにかく食欲大魔神ですね(笑)いっぱい食べるし物怖じもしない、外交的な性格なので彼が営業部長です。でも、そんなみるくが急にごはんが食べられなくなってしまった時期がありました。2013年の秋から冬頃だったのですが、全くごはんを食べないし、食べてもすぐに戻してしまう。それでガリガリにやせてしまったんです。最終的には東大の動物医療センターで手術を行い、ストローのように細くなってしまった腸の一部分を切断して再度つないでもらいました。結局そうなってしまった原因はよく分からなかったのですが、やがて元気に回復して食欲も戻り、社員一同でほっとしたことをよく覚えています。

―それは良かったですね。ところで鶴田さんは昔から猫が好きだったのですか。

鶴田:そうですね。でも小さい頃は家では動物を飼わせてもらえなくて、唯一いたのはインコと金魚のみ。小学生の時には、近所で捨てられていた猫のところに毎日足を運んで餌やミルクを与えたりもしていました。

―猫のどんなところが特に魅力的だと思いますか。また、猫社員を受け入れた当初と比べて何か変わったことなどはありますか。

鶴田:なんだろうなあ。全部ですね、もう(笑)こんなかわいい生き物はいない、顔も手触りも動きも完璧ですよ。あと、なんでこんなに人間に甘えるのがうまいのでしょうね。かわいいことを武器に生きてきて、それで種の存続を図っているのだと思います。当社で猫たちを受け入れてもう10年以上経ちますが、彼らは本当に変わらないですよ。ただ、歳をとってそろそろ老年期にさしかかっているかなというだけで。

―猫社員の健康ケアについて、何か意識していることがあれば教えて下さい。

鶴田:特にはありませんが、ごはんはしっかりとしたいいものを与える、体に合わないものはあげないということですね。それは人間がしっかり選んであげなければと思います。

―世間では猫人気の一方で残念ながら殺処分などの問題もまだまだありますが、そのことに関して思うことは。

鶴田:殺処分される猫は一刻も早くゼロにしたいですね。そのための運動や保護活動をされている団体もたくさんありますが、それぞれ主義主張があって方向性が微妙に異なったりする。運動自体に関わっていくにもパワーが必要です。でもお金を出したりといったことはある程度できると思うので、会社で稼いで可能な範囲で協力したり、行き場のない猫たちを保護したりできればと思います。それから野良猫が問題になったりというのも、大きな話をすると人口が東京に一極集中しすぎという背景もあるのでは。人と人の距離が狭すぎてパーソナルスペースに余裕がないので人々がイライラしていて、その結果として猫を迷惑だと感じる人も出てきてしまう。もっと人が少なければ、自分よりも小さくて弱い猫という生き物を迷惑だと感じることはないと思うんです。

鶴田:地域によっては殺処分ゼロを達成している所もあるので、都市の人間ももう少し頑張りたいですよね。本業もあるので当社だけではなかなか難しいですけども、おかげさまで猫を通じていろいろな方ともお知り合いになれたので、協力していい活動ができればと思います。

―最後に猫好きな読者の方々へ、何かメッセージはありますか。

鶴田:猫好きな方たちは、猫がどんなにかわいいかということはもう言わなくても分かっていると思います(笑)だからかわいそうな猫や不幸な猫を減らすために、力を合わせて少しでも何かできれば。もしご自身が飼っている猫がいるのであれば、まずはその子の幸せを第一に考えてほしいです。それがより多くの猫の幸せにもつながるのではないかと。私は子どもが二人いますが、子どもは親の姿を見て育つわけで、親が猫をかわいがるのを見て育てば、子どももそういう人間になるはずじゃないですか。そういう世の中になってほしい。あとは、いつでもぜひ当社に遊びに来て下さい。事前にご連絡を頂ければ、見学なども可能な範囲で受け付けていますので。

―ありがとうございました。


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