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都会と田舎の動物病院を比べてみた

私は大学時代を山口県で過ごし、その後博多の動物病院に就職、数年で名古屋に移り、このたび諸事情により上京した者です。偶然にも少しずつ都会に来てしまった私から見ると、都会と田舎の違いというものはとても興味深く、どちらも甲乙つけがたい魅力を持っており、この縦長い国に生まれて良かったと再認識させてくれるテーマです。

撮影:榎田智子(アースボイスプロジェクト)

そんなわけで、体感している人は結構珍しいんじゃないか…ということで、獣医師から見た「都会と田舎の動物病院の違い」をいくつか挙げてみます。

 

①病気の種類が違う

特に寄生虫感染症。東京の獣医師の方と雑談をしていて、「え!この虫見たことないの?!」という驚きの多いこと多いこと。山口はもちろん、博多でもですね…ちょっと山のほうに行くとですね…猫がカエルを食べちゃうんですよ…そんで、カエルが持ってる虫を貰っちゃうんですよ…お食事中の方、すみません。

ちなみに、必ずしも田舎のほうが虫が多いわけではありません。都会の街路樹や川沿いには意外と沢山の虫さんが暮らしているようで、しかもインフラ整備された環境は虫さんにとっても好都合みたいです。事実、名古屋に引っ越して初めて「シラミ」を見ました。まさかこんな都市部で寄生虫感染なんて…と予防を手抜きしてしまう飼い主さんが多いのも、都会の動物病院で意外と虫を見かける一因になっていると思います。

あと、「耳ダニ」も何故か多かったです。大きい声じゃ言えませんが、ショップやブリーダーさんから来た純血の猫さんに意外と…、これ以上は言えません(笑)

ちなみに、九州と本州では気温も違うので、虫が出やすい時期も微妙にずれており、例えばフィラリア症の予防期間に若干の差が出たりします。

 

②地方の動物病院で働くなら、方言の勉強は必須

動物病院に来院される飼い主さまは、「うちの子の話を聞いてほしい」という思いを抱いていらっしゃいますから、診療中の会話が非常に白熱することもしばしばです。治療対象である動物は言葉を話さないので、代弁者である飼い主さまのお話は重要なヒント。一言一句も逃すまいと、獣医師や病院スタッフも必死で耳を傾け、メモをとっているわけですが…出身地があまりに離れていると、どうも細かいニュアンスが伝わりにくくなるようです。私が働いていた博多の言葉も、他の地域出身の方には本当にわからないみたいです。私も名古屋で働いていた時に、言葉の違いにしばしば驚かされました。少しずつ慣れていくしかないのですが、動物病院ではかなりディープな話題で飼い主さまと話し込みますので、出身地以外の地方で働く場合は、なるべく早く方言を体得することが日々の診療において重要だなという私感です。

 

③医療レベルはやっぱり違う

地方にとっては悲報ですが…動物医療において、地域格差は否めません。こればかりは仕方がないのです。人間の医療と違い、獣医療は自由診療。基本的には院長が全ての自腹を切って機器や設備を導入し、経営により回収せねばなりません。よって、需要がないところに設備は作れません。

でもご安心ください。設備や機械を持っていなくても、どんな症状にどんな設備の病院を紹介すればいいのか、勉強している獣医師なら大丈夫です。飼っている動物が特別な設備を要する病気にかかる確率は非常に低いですから、文字通り「万が一」の時にしっかり紹介してくれる病院をかかりつけにしましょう。いわゆる「フツーの病気」の診療は、全国どこへ行ってもほぼ同じです。

 

ぐだぐだと書いてしまいましたが、動物医療に限らずなんでも、都会には都会の、田舎には田舎の良さがありますよね。日本って狭いようで意外と広いなぁと、いろんな地方に住んでみて実感しています。


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