猫手の話の前に…
「え? そういうことなの? ホント? いやいやいや、この本がシャレで書いてるんじゃないの?」と、中身を読むまで信じられなかったのがこれ。
読んで、びっくり。ホントなんだ…。「引っ張りだこ」という言葉が、タコをぎゅっと引っ張って日に干す形に由来するだなんて、そんな“ベタ”な……(笑)。
この本には他に、「折り紙つき」「几帳面」「差し金」「羽目を外す」「埒が明かない」といった言葉の由来が写真付きで説明されている。
この写真付きで説明されている…というのが秀逸! 写真のインパクトが大きいので、「へぇ~」「ほぉ~」感が増すし、これまでに聞いたことや調べてみたことのある言葉についても、新鮮な気持ちで読むことができる。
そして、著者にとって『1』では紹介しきれなかった、でも由来がとてもおもしろい言葉がたくさん残っていたのだろう。10カ月後に『目でみることば2』が発行された。
「長いものに巻かれる」の「長いもの」は象の鼻だったのかい…とつっこみつつ裏表紙を見ると…お、猫!
ついに、猫が登場!
男の子が気になる女の子をからかったり、小さい子同士がちょっと手を出しあったり、あるいは口説いてみたり(笑)。
そんな「ちょっかいを出す」という言葉の由来が「猫」にあったなんて。
《余計な手出しをすることを「ちょっかいを出す」と表現するが、これはネコなどが前の片足でものをかき寄せる仕草を言い表した言葉で、もともと「手掻き」と表現されていたという説がある。つまり「手」が「ちょ」に変わったわけだが、これは「手水」を「ちょうず」と読むことと同じ変化であると考えられる》とのこと。
ネットでも少々調べてみたところ…
「手掻き」→「ちょっかき」→(「ちょっかき」の「かき」がイ音便化して「かい」となり)→「ちょっかい」ということのようだ。
猫が前足でものをかき寄せるようにするしぐさが、気まぐれに(あるいは確信犯的に?)、人に対して何かを仕掛けるような行動を連想させたのだろうか。
また、この本のおもしろいところは、1つの言葉の説明に対して、何かしら豆知識がついていることにもある。
それは撮影秘話のこともあれば、関連した言葉の説明というケースなどさまざま。
猫の仕草が由来となった「ちょっかいを出す」では、この撮影に協力してくれた三毛猫姉妹の「あずきちゃんとささげちゃん」(!)が紹介されている。ちょっかいを出すしぐさはおとなの猫はあまりしないそうで、生後6カ月程度のこの猫姉妹はうってつけのモデルだったとか。
『目でみることば2』にはこの他に、「ぐれる」「興奮の坩堝(るつぼ)」「しっぺ返し」「関の山」「台無し」「根回し」「へそくり」などが掲載されている。
たとえば、「ぐれる」という言葉が「はまぐり」に由来するというのもおもしろい。
はまぐりは、古くから、貝合わせという神経衰弱のような遊びに用いられてきた→ここから「はまぐり」という言葉の前後を逆にした「ぐりはま」という言葉が「食い違って合わない」という意味を持つようになり→「ぐれはま」と変化→「ぐれ」と略され→のちに動詞化したのが「ぐれる」という言葉で、人の道からはずれることを意味するようになったそうだ。
こういうのは「ひらがな」のある日本語だからこそ、かな。やはり日本語はおもしろい。
本書に取り上げられている猫が関係する言葉は「ちょっかいを出す」だけだったが、「猫」が使われる言葉や言いまわしは他にもあるので、おもしろい由来などがあったらこれからも紹介していきたいと思う。