皆様、おうちの猫ちゃんの迷子対策は何をしていますか?「うちの子は外には出たがらないから大丈夫」は禁句ですよ。万が一、脱走や災害で離れ離れになった時のために、何らかの対策は施しておく必要があります。
普段室内で過ごしている猫ちゃんこそ、何かの拍子に外に出てしまうと、パニックを起こして遠くに逃げてしまうことがあります。地震などの災害時に脱走したり、さらに最悪の事態として、人間の命を守るために、猫ちゃんを室内に置いて避難せざるを得ないこともあるでしょう。そんな時のために一般的に推奨される迷子対策は、「首輪(迷子札)」と「マイクロチップ」の二重対策です。今回はこれらについてお話しします。
まず、首輪についてです。猫に首輪をつける一番の目的は、「飼い猫だとわかるようにしておくため」です。不測の事態の際に、野良猫と間違えられて他の人に飼われてしまったり、保健所に連れて行かれたりしないために、遠目に見てもすぐに飼い猫だとわかることは大変重要です。
猫に首輪をつける場合は、猫にストレスをかけないように配慮しましょう。軽くて柔らかく、首を締め付けない素材が適しています。また、ワンポイントの飾りや迷子札がついているものが多いですが、過度な装飾は避けましょう。特に鈴はよく考えてつけるべきです。国民的なアニメキャラクターなどを見ても、猫の首輪には鈴がついているイメージがありますが、これをストレスに感じる猫は少なくありません。聴力の優れている猫ちゃんにとって、常に自分の顔の近くで鈴の音がするというのは嫌なものです。
それでも鈴が必要なケースとしては、音で居場所を知ることで猫の安全を守れる場合です。どうしても外出してしまう猫ちゃんは、鈴で居場所がわかると安心ですね。さらに、お子様やご高齢の方と同居している場合は、飼い主さんが猫を踏んでしまったり閉じ込めたりする事故を防ぐ効果が期待できます。やや余談ですが、多頭飼いのうちの1匹が他の猫をいじめてしまう場合、いじめっ子の猫に鈴をつけておくと他の猫たちが音で接近に気づいてストレスを軽減させることができる場合もあります。
首輪を装着する場合は、猫や飼い主の情報を示す「迷子札」もセットで考えておきましょう。
迷子札には、猫ちゃんと飼い主さんの名前、連絡先などを記載します。迷子札に普段の電話番号を記すことに不安がある場合、IP電話(050番号)などを別途取得して記載すれば安心ですね。
と、ここまで説明しておいてなんですが、基本的に猫は「何かを身につけること」が嫌いな生き物です。愛猫に初めて首輪をつける場合は、必ず様子をしっかり観察しましょう。首輪の適切なサイズは指が2本入る程度の余裕をもたせた状態です。きついと苦しがりますし、ゆるいと下の歯や前肢などに引っ掛けてしまうこともあります。このような状態になっていないか、少なくとも数日は注意深く見てあげてください。首輪を嫌がる子は短時間から慣らしたり、ゆるいリボンやシュシュのような代用品で練習するのも有効です。飾りや迷子札を気にして嫌がる子は、それらを外した状態から慣れさせてあげましょう。
使用を開始したあとも、首輪の状態を定期的にチェックしてください。使用しているうちにサイズ感が変わっていることがあります。また、ひどい汚れや傷ができた場合は、買い替えることになるかと思いますが、首輪を新調したら、装着した愛猫の写真を撮ることも忘れずに。万が一脱走してしまった時の重要な情報になります。ちょっと個性的な模様を選んでおくと周囲に特徴を説明しやすく、遠目にも発見しやすいのでおすすめです。
ちなみに、一般的に猫の首輪の留め具は「セーフティバックル」と呼ばれる、強く引っ張ると外れる設計のものが主流です。猫は狭い隙間をすり抜けたり、高いところにジャンプしたりできる優れた身体能力を持っているので、木の枝や思わぬ出っ張りに首輪が引っかかってしまうと、首吊り状態になり非常に危険だからです。猫の安全のために必要な機構ではありますが、裏を返せば「猫の首輪は強く引っ張ると外れてしまう」ということ。実際、災害や長期間の放浪生活を経て、首輪が外れてしまった猫ちゃんは非常に多いです。その対策として、猫ちゃんの体内に埋め込むマイクロチップも併せて装着しておくことをお勧めします。
こちらの写真の指先にある小さい物が「マイクロチップ」です。このチップの中にはID(番号)が入っていて、その番号に飼い主さんの住所や名前、動物の情報を紐付けて登録しておく仕組みになっています。チップは首元あたりの皮膚に注射で埋め込まれ、動物病院や保健所などに置いてあるマイクロチップリーダーで番号を読み取り照会します。多くの自治体で首輪とマイクロチップの二重対策を勧めていることからも分かるように大変有効な方法ではありますが、こちらもいくつかの欠点があります。
まず想像しやすい欠点としては、装着時は少し痛いです。写真にあるように、装着用の針は結構太いので、できれば避妊去勢手術のついでに入れてしまいましょう。
それからあまり知られていない欠点ですが、マイクロチップは注射後に移動してしまうことがあります。こちらは偶然撮られたレントゲン画像ですが、マイクロチップがお腹の方に移動しているのがお分かり頂けますでしょうか。当然身体には無害なのですが、これだとマイクロチップリーダーで見つけることができません。首輪も外れてしまうことがあるように、マイクロチップも見失うことがある。だからこその二重対策だと思っておきましょう。
首輪もマイクロチップも、万が一の時に飼い主さんと猫をつなぐ大切な「お守り」です。しかし、この世に絶対など存在しない以上、どちらも完璧なものではありません。どちらも装着する、どちらか一方を装着するなど、愛猫の性格や飼い主さんのライフスタイルに合わせた選択をしましょう。判断に迷ったら、動物病院に相談してもOKです。病気以外の相談は気が引けるかもしれませんが、動物の安全を守るのも獣医師の仕事ですから、どんどん相談してくださいね。
皆様、おうちの猫ちゃんの迷子対策は何をしていますか?「うちの子は外には出たがらないから大丈夫」は禁句ですよ。万が一、脱走や災害で離れ離れになった時のために、何らかの対策は施しておく必要があります。
普段室内で過ごしている猫ちゃんこそ、何かの拍子に外に出てしまうと、パニックを起こして遠くに逃げてしまうことがあります。地震などの災害時に脱走したり、さらに最悪の事態として、人間の命を守るために、猫ちゃんを室内に置いて避難せざるを得ないこともあるでしょう。そんな時のために一般的に推奨される迷子対策は、「首輪(迷子札)」と「マイクロチップ」の二重対策です。今回はこれらについてお話しします。
まず、首輪についてです。猫に首輪をつける一番の目的は、「飼い猫だとわかるようにしておくため」です。不測の事態の際に、野良猫と間違えられて他の人に飼われてしまったり、保健所に連れて行かれたりしないために、遠目に見てもすぐに飼い猫だとわかることは大変重要です。
猫に首輪をつける場合は、猫にストレスをかけないように配慮しましょう。軽くて柔らかく、首を締め付けない素材が適しています。また、ワンポイントの飾りや迷子札がついているものが多いですが、過度な装飾は避けましょう。特に鈴はよく考えてつけるべきです。国民的なアニメキャラクターなどを見ても、猫の首輪には鈴がついているイメージがありますが、これをストレスに感じる猫は少なくありません。聴力の優れている猫ちゃんにとって、常に自分の顔の近くで鈴の音がするというのは嫌なものです。
それでも鈴が必要なケースとしては、音で居場所を知ることで猫の安全を守れる場合です。どうしても外出してしまう猫ちゃんは、鈴で居場所がわかると安心ですね。さらに、お子様やご高齢の方と同居している場合は、飼い主さんが猫を踏んでしまったり閉じ込めたりする事故を防ぐ効果が期待できます。やや余談ですが、多頭飼いのうちの1匹が他の猫をいじめてしまう場合、いじめっ子の猫に鈴をつけておくと他の猫たちが音で接近に気づいてストレスを軽減させることができる場合もあります。
首輪を装着する場合は、猫や飼い主の情報を示す「迷子札」もセットで考えておきましょう。
迷子札には、猫ちゃんと飼い主さんの名前、連絡先などを記載します。迷子札に普段の電話番号を記すことに不安がある場合、IP電話(050番号)などを別途取得して記載すれば安心ですね。
と、ここまで説明しておいてなんですが、基本的に猫は「何かを身につけること」が嫌いな生き物です。愛猫に初めて首輪をつける場合は、必ず様子をしっかり観察しましょう。首輪の適切なサイズは指が2本入る程度の余裕をもたせた状態です。きついと苦しがりますし、ゆるいと下の歯や前肢などに引っ掛けてしまうこともあります。このような状態になっていないか、少なくとも数日は注意深く見てあげてください。首輪を嫌がる子は短時間から慣らしたり、ゆるいリボンやシュシュのような代用品で練習するのも有効です。飾りや迷子札を気にして嫌がる子は、それらを外した状態から慣れさせてあげましょう。
使用を開始したあとも、首輪の状態を定期的にチェックしてください。使用しているうちにサイズ感が変わっていることがあります。また、ひどい汚れや傷ができた場合は、買い替えることになるかと思いますが、首輪を新調したら、装着した愛猫の写真を撮ることも忘れずに。万が一脱走してしまった時の重要な情報になります。ちょっと個性的な模様を選んでおくと周囲に特徴を説明しやすく、遠目にも発見しやすいのでおすすめです。
ちなみに、一般的に猫の首輪の留め具は「セーフティバックル」と呼ばれる、強く引っ張ると外れる設計のものが主流です。猫は狭い隙間をすり抜けたり、高いところにジャンプしたりできる優れた身体能力を持っているので、木の枝や思わぬ出っ張りに首輪が引っかかってしまうと、首吊り状態になり非常に危険だからです。猫の安全のために必要な機構ではありますが、裏を返せば「猫の首輪は強く引っ張ると外れてしまう」ということ。実際、災害や長期間の放浪生活を経て、首輪が外れてしまった猫ちゃんは非常に多いです。その対策として、猫ちゃんの体内に埋め込むマイクロチップも併せて装着しておくことをお勧めします。
こちらの写真の指先にある小さい物が「マイクロチップ」です。このチップの中にはID(番号)が入っていて、その番号に飼い主さんの住所や名前、動物の情報を紐付けて登録しておく仕組みになっています。チップは首元あたりの皮膚に注射で埋め込まれ、動物病院や保健所などに置いてあるマイクロチップリーダーで番号を読み取り照会します。多くの自治体で首輪とマイクロチップの二重対策を勧めていることからも分かるように大変有効な方法ではありますが、こちらもいくつかの欠点があります。
まず想像しやすい欠点としては、装着時は少し痛いです。写真にあるように、装着用の針は結構太いので、できれば避妊去勢手術のついでに入れてしまいましょう。
それからあまり知られていない欠点ですが、マイクロチップは注射後に移動してしまうことがあります。こちらは偶然撮られたレントゲン画像ですが、マイクロチップがお腹の方に移動しているのがお分かり頂けますでしょうか。当然身体には無害なのですが、これだとマイクロチップリーダーで見つけることができません。首輪も外れてしまうことがあるように、マイクロチップも見失うことがある。だからこその二重対策だと思っておきましょう。
首輪もマイクロチップも、万が一の時に飼い主さんと猫をつなぐ大切な「お守り」です。しかし、この世に絶対など存在しない以上、どちらも完璧なものではありません。どちらも装着する、どちらか一方を装着するなど、愛猫の性格や飼い主さんのライフスタイルに合わせた選択をしましょう。判断に迷ったら、動物病院に相談してもOKです。病気以外の相談は気が引けるかもしれませんが、動物の安全を守るのも獣医師の仕事ですから、どんどん相談してくださいね。