第五話
Subject: 【報告】グラファイト試作品
From:nyantama@silvervinekingdom.org
Date:2013/05/04 09:09
To:king@silvervinekingdom.org
シルバーバイン王国
親愛なるにゃんこ大王殿
エンジニアのにゃんたまです。
またたびの季節になりましたね。あまりこの地域ではまたたびがなくて、南の方の外国から船で持ってくるそうです。長い期間をかけて輸送されるためか、あまり良い香りがしません。王様に送ってもらったまたたびを休憩時間に少しずつ使って楽しんでいます。
王様のご指示の通り、グラファイトで作ることにしました。
この前お世話になった、つくばのシルバーバイン出身の方にお願いして、グラファイトをパインの木で切り出してもらいました。パインは安く、流通量も多いのでいつでも手に入ります。塗装はクリアで、やや艶のないマット加工のものにしました。塗装を厚くしすぎると、見た目はきれいなのですが、滑りやすくなります。逆に薄くしすぎると、すぐに傷がついたり、汚れやすくなったりします。
出来上がりを見ても、風合いはかなり良いと思います。
ただ、どうしてもコストが高くつきます。大きな長方形の板から、複雑な形を切り出していますので、一枚の板から取れる枚数が少なくて、捨ててしまう部分が多くなるからです。大きな板の切り出した残りの部分から、できるだけ他の小さな板をとれるように工夫したのですが、贅沢な使い方になってしまいます。
切り出す機械の使用料も思った以上にかかりました。輸送するにも板が大きいので、この点でも割高になってしまうということもわかりました。
費用のこともあったのですが、それ以上に大きな気づきがありました。
それは大きさのことです。
ネコと暮らす「人間」に、このグラファイトを見てもらったところ、ちょっと大きすぎるという感想が多かったのです。でも、一方ではこれくらいの広さがあった方がよいとの声もありまして、なかなか皆さんの意見を満たすのは大変だなと思いました。
なるほど、人間ひとりとネコ1匹で暮らす家もあれば、人間5人とネコ3匹で暮らしている家もあります。
家によっては、グラファイトを置くと大きすぎて、ほかのものが置けなくなってしまうこともあるようです。
とはいっても、それなりに大きなネコもいますから、あまり小さく作りすぎると登れませんし、そもそも狭すぎると落ち着きません。家の広さや好みに合わせて、自由に大きさや広さ、高さが変えられた方がよい気がしてきました。
ミーさんと少し話せました。
こちらのニャー語は、ちょっとなまりがあります。ちょび髭のおじさんネコは、特にこのなまりがきつくて、職人のような雰囲気の話し方をしますが、ミーさんはすごくきれいなニャー語を話します。シルバーバインにいたことがあるのかと聞くと、「ふふふ。」とだけ笑って、答えてくれませんでした。ちょび髭おじさんは、外国のまたたびのブローカーをしているそうです。この間、王様にいただいたまたたびとおじさんのを交換したら、珍しい銘柄だと言って喜んでくれました。
また進捗がありましたら、報告いたします。
愛をこめて にゃんたま