序章
この物語は、ネコの国「シルバーバイン王国」の構造エンジニア・にゃんたまによる報告書である。
<第一話>
Subject:【報告】日本特派員より
From:nyantama@silvervinekingdom.org
Date:2012/05/10 19:22
To:king@silvervinekingdom.org
シルバーバイン王国
親愛なるにゃんこ大王殿
エンジニアのにゃんたまです。
王様のご指示により、日本という国でのネコの暮らしを良くするように派遣され、はや1カ月。
これまでの報告として、このメールを差し上げました。
この国は、ネコとはちょっと違った生き物がいっぱいいて、びっくりしました。どうやら「ヒト」とか、「人間」とかというらしいのですが、後ろ足だけで器用に歩く、しっぽのない生物がネコと暮らしています。しかしこの「人間」は、ネコのことをよく分かっていないようです。そもそも、ニャー語が話せる者は少ししかいませんし、自動翻訳機も無いようです。お世辞にも、高等な知能を持ち合わせた生物とはいえません。ただ、どこかのタイミングで大量増殖したようで、この国では、この「人間」があたかもネコよりも偉い生き物のようにふるまっています。
さて、王様のご指示のとおり、こちらのネコの暮らしを調査しましたが、特に住まいの環境は良くありません。この日本という国には、戦火を逃れて移住したネコがおよそ1千万匹いるようですが、大半はこの「人間」と一緒に暮らしているようです。色々なネコに聞いて回りましたが、皆、「人間のことしか考えていない家ばかりだ」「ネコには住みにくい」と言っています。
走れない、登れない。驚くことに、家の中に登れるところが全くないといった家もあるようです。やはりこれではストレスが溜まりますし、運動不足になってしまいます。特にマンションと呼ばれる、蜂の巣のような所で暮らすネコは、外に遊びにも行けないので、とても窮屈です。それが嫌で、外でキャンプ生活をおくるネコもたくさんいます。
この人間優先で考えられた住環境をネコにとっても良くするには、かなりの時間がかかりそうです。私自身、こちらでの暮らしは慣れそうにありません。でもこちらで暮らす1千万のネコのために何とかしたいと思います。それがせめてもの償いというものです。また進捗がありましたら、報告いたします。
愛をこめて にゃんたま
P.S.
もしお許しをいただけるならば、シルバーバインのまたたびを送ってください。