猫とお客様を繋ぐ場所。“猫カフェ”を巡るそれぞれのストーリー(6)

猫がどんなに好きでも、仕事や環境面から一緒に住むことができない時がある。そんな時の心の拠り所が全国にある猫カフェや、保護猫カフェなのかもしれない。すぐには一緒に住めなくても、お店にいる猫と過ごす時間が仕事へのモチベーションや、いずれ猫と住むための気持ちを高めてくれるのだろう。そのようなホッとする一時を提供するために、保護猫カフェのオーナーやスタッフの方は、日々努力されているのだと思う。

テキーラ

猫見家を代表するテキーラ店長。店長目当てのお客様も多いそう。

笑顔が絶えない空間で、猫と過ごすことが出来る空間ー猫見家

今回お話を伺った代表の桐生さんの前職は、サービス業の営業マンです。約17年間勤めた仕事から一転、保護猫カフェの仕事に飛び込んで行ったのには、どのような経緯があったのでしょうか。
「実家では子供の頃から猫を飼っていましたが、営業マンをしていた頃は、転勤が多くて猫と住める環境ではありませんでした。私は、人の笑顔を見ながら仕事をしたくてサービス業に就きました。仕事では良いことも沢山ありましたが、澱のようにストレスが溜まる時もありますよね。そんな時は、当時まだ少なかった猫カフェを探して、車で高速を飛ばして遊びに行っていました。月日が経ち仕事のキャリアが長くなると、現場業務から徐々に管理職としての仕事が増え、仕事のやりがいを見失いつつありました。猫カフェが地元(新潟県長岡市)にもオープンすることを期待しましたが、中々出来る気配もなく、様々な紆余曲折を経て自分でお店をやろうと思い立ち、当時宇都宮市にあったフェリスというお店で2011年から修行を始めました」
フェリスは、元々保護猫活動をしている団体が保護資金を捻出するために開店したお店で、当時としては希少な保護猫活動をしているカフェ形態のレストラン。桐生さんは飲食業における接客や調理、猫の世話や里親募集活動やボランティア等、業務の中で様々なことを吸収していきます。しかし、修行期間は突然終わりを迎えました。社長の体調不良で店舗の存続が難しくなり、お店は2013年5月に閉店します。
「NPO法人として認定されて、保護猫活動や店舗運営が更に発展していけそうなタイミングでした。私の目の前に残ったのは、店舗で保護していた猫たちと機材一式です。当初は地元での開業を計画していましたが、この出来事により、自分の店を宇都宮市内で開業することを決めました」

猫見家外観 (2)

大通りからもキャッチーな看板が目に留まります。

お店内観 (2)

毎日の掃除で磨き上げられた店内では、リラックスした時間を過ごせます。

思いもよらないタイミングでしたが「猫見家」は2013年10月11日にオープン。フェリス同様、店内での猫の様子を眺めながら本格的な食事やデザートを提供するため、毎日店内を清潔に磨きあげてお客様を迎えています。保護猫カフェとして里親募集等の活動を大切にされながら、それと同時に「訪れるお客様を笑顔にしたい」という桐生さんのサービス業の経験が、店内の雰囲気を作り出しています。天井が高く、陽が差し込む店内では猫もお客様もくつろいだ一時を過ごすことが出来るのです。

保護猫活動に関しても、桐生さんならではの考えがあります。
「猫見家では、一般の方からの引取も行っているので問合せや相談も多数頂きますが、今年に入って引き取ったのは4匹です。猫は、性質として移動や環境の変化を嫌いますし、単独行動を好みますよね。お店で沢山の猫と過ごしたり、見知らぬ人との触れ合いが性格上苦手な子は当然います。また、保護主さんには動物病院での健康診断やノミダニの駆除等やワクチン接種を2回して頂いています。ワクチンの抗体が出来るまでに2、3週間は必要なので、受け入れまで最低2ケ月はかかります。その間にも保護主さんには、ネットやSNSでの呼びかけ、里親会での参加等、お店での引取以外の方法を実践してもらいます。

保護主さんには大変な労力を頂きますが、結果として最終的に行先がない子がお店にやってきます。そして、保護主さんやお店のスタッフに愛情をかけられた猫達は、次第に人懐っこい猫に変化するのです。引取までに時間をかけるのは、店舗の猫達の健康状態の維持や性格の見極めもありますが、猫見家に来ることがその猫にとって幸せなのかを判断する時間も取りたいという気持ちもあります。結果としてお店に来る前に里親さんが見つかる場合も多々ありますが、どの猫も幸せに暮らしてほしいですね」

そら

そらは、猫見家一番の癒し顔でお客様を出迎えます。

修業をしたフェリスにいた猫も20匹以上いましたが、最終的にお店に来たのは2匹です。特に白黒のオス猫「ボス」は忘れがたい存在でした。
「ボスは元々ノラ猫で年齢不詳、口内炎も酷くカラダも痩せていたのですが、レーザー治療で口内炎が治った途端、他の猫との喧嘩が絶えないくらい元気になりました。既に高齢で性格上譲渡は難しいと思いましたが、ボスに一目惚れしたお客様が里親になりました。
ボスに限らず、里親のご家族と幸せに暮らしている報告を頂くと、この仕事をやっていてよかったなと思いますね。その子が手のかかった子なら、思い入れが深くなるのかもしれません」
また、里親になる方への審査も厳しく行っています。完全室内飼育と猫が天寿を全うするまで面倒を見る強い覚悟があるのか。そして、里親候補の方への家庭訪問も行い、防止扉や鍵の設置等、猫が外に逃げないための環境作りもお願いする場合もあるそうです。

food-1

本格的な料理は、気持ちが和む盛り付けで提供。

food-2

「キャットタワーフレンチトースト」はボリューム満点。

日々、店舗運営と保護猫活動で多忙を極める桐生さんですが、今後はどのようなお店にしていきたいのでしょうか?
「修業した店舗での経験から、猫たちの様子を眺めながら本格的な料理やドリンク等を提供していること。また、当店からの細かい条件をクリアしてからになりますが、一般の方から猫を引き取ることを公にしているお店は少ないと思いますし、うちのお店の個性になっています。保護猫活動はもちろん大切ですが、それと同じくらいに訪れるお客様が笑顔になってほしいと作ったお店です。そのために、私を含めたスタッフ一同で今後も精進していきたいと思います。その他、意外に情報が少ない里親探しの方法をお客様に提供して、不幸な猫が減り、幸せな猫が増えていく社会に貢献していければと考えています。」

2匹!

お店で出会った猫たちも、まるで兄弟のように仲良くなることもあります。

1017.4 (2)

大好きなオモチャへの食いつきが凄く、こんなにアグレッシブな猫もいますよ。

栃木県内で宇都宮市は交通アクセスもよく、遠方からも比較的行きやすい場所。リラックスした猫に会いに行くもよし、料理や空間を楽しみに訪れるのもよし。様々な楽しみを提供している猫見家に、一度訪れてみてはいかがでしょうか。

猫見家
公式サイト:http://nekomiya.jimdo.com/
アクセス:栃木県宇都宮市江野町3番8号 矢口ビル2階
営業時間:AM11:00-PM22:00 火曜、第1・3水曜日定休(祝日の場合は営業)

著者:広瀬菜穂子

猫とお客様を繋ぐ場所。“猫カフェ”を巡るそれぞれのストーリー(6)

猫がどんなに好きでも、仕事や環境面から一緒に住むことができない時がある。そんな時の心の拠り所が全国にある猫カフェや、保護猫カフェなのかもしれない。すぐには一緒に住めなくても、お店にいる猫と過ごす時間が仕事へのモチベーションや、いずれ猫と住むための気持ちを高めてくれるのだろう。そのようなホッとする一時を提供するために、保護猫カフェのオーナーやスタッフの方は、日々努力されているのだと思う。

テキーラ

猫見家を代表するテキーラ店長。店長目当てのお客様も多いそう。

笑顔が絶えない空間で、猫と過ごすことが出来る空間ー猫見家

今回お話を伺った代表の桐生さんの前職は、サービス業の営業マンです。約17年間勤めた仕事から一転、保護猫カフェの仕事に飛び込んで行ったのには、どのような経緯があったのでしょうか。
「実家では子供の頃から猫を飼っていましたが、営業マンをしていた頃は、転勤が多くて猫と住める環境ではありませんでした。私は、人の笑顔を見ながら仕事をしたくてサービス業に就きました。仕事では良いことも沢山ありましたが、澱のようにストレスが溜まる時もありますよね。そんな時は、当時まだ少なかった猫カフェを探して、車で高速を飛ばして遊びに行っていました。月日が経ち仕事のキャリアが長くなると、現場業務から徐々に管理職としての仕事が増え、仕事のやりがいを見失いつつありました。猫カフェが地元(新潟県長岡市)にもオープンすることを期待しましたが、中々出来る気配もなく、様々な紆余曲折を経て自分でお店をやろうと思い立ち、当時宇都宮市にあったフェリスというお店で2011年から修行を始めました」
フェリスは、元々保護猫活動をしている団体が保護資金を捻出するために開店したお店で、当時としては希少な保護猫活動をしているカフェ形態のレストラン。桐生さんは飲食業における接客や調理、猫の世話や里親募集活動やボランティア等、業務の中で様々なことを吸収していきます。しかし、修行期間は突然終わりを迎えました。社長の体調不良で店舗の存続が難しくなり、お店は2013年5月に閉店します。
「NPO法人として認定されて、保護猫活動や店舗運営が更に発展していけそうなタイミングでした。私の目の前に残ったのは、店舗で保護していた猫たちと機材一式です。当初は地元での開業を計画していましたが、この出来事により、自分の店を宇都宮市内で開業することを決めました」

猫見家外観 (2)

大通りからもキャッチーな看板が目に留まります。

お店内観 (2)

毎日の掃除で磨き上げられた店内では、リラックスした時間を過ごせます。

思いもよらないタイミングでしたが「猫見家」は2013年10月11日にオープン。フェリス同様、店内での猫の様子を眺めながら本格的な食事やデザートを提供するため、毎日店内を清潔に磨きあげてお客様を迎えています。保護猫カフェとして里親募集等の活動を大切にされながら、それと同時に「訪れるお客様を笑顔にしたい」という桐生さんのサービス業の経験が、店内の雰囲気を作り出しています。天井が高く、陽が差し込む店内では猫もお客様もくつろいだ一時を過ごすことが出来るのです。

保護猫活動に関しても、桐生さんならではの考えがあります。
「猫見家では、一般の方からの引取も行っているので問合せや相談も多数頂きますが、今年に入って引き取ったのは4匹です。猫は、性質として移動や環境の変化を嫌いますし、単独行動を好みますよね。お店で沢山の猫と過ごしたり、見知らぬ人との触れ合いが性格上苦手な子は当然います。また、保護主さんには動物病院での健康診断やノミダニの駆除等やワクチン接種を2回して頂いています。ワクチンの抗体が出来るまでに2、3週間は必要なので、受け入れまで最低2ケ月はかかります。その間にも保護主さんには、ネットやSNSでの呼びかけ、里親会での参加等、お店での引取以外の方法を実践してもらいます。

保護主さんには大変な労力を頂きますが、結果として最終的に行先がない子がお店にやってきます。そして、保護主さんやお店のスタッフに愛情をかけられた猫達は、次第に人懐っこい猫に変化するのです。引取までに時間をかけるのは、店舗の猫達の健康状態の維持や性格の見極めもありますが、猫見家に来ることがその猫にとって幸せなのかを判断する時間も取りたいという気持ちもあります。結果としてお店に来る前に里親さんが見つかる場合も多々ありますが、どの猫も幸せに暮らしてほしいですね」

そら

そらは、猫見家一番の癒し顔でお客様を出迎えます。

修業をしたフェリスにいた猫も20匹以上いましたが、最終的にお店に来たのは2匹です。特に白黒のオス猫「ボス」は忘れがたい存在でした。
「ボスは元々ノラ猫で年齢不詳、口内炎も酷くカラダも痩せていたのですが、レーザー治療で口内炎が治った途端、他の猫との喧嘩が絶えないくらい元気になりました。既に高齢で性格上譲渡は難しいと思いましたが、ボスに一目惚れしたお客様が里親になりました。
ボスに限らず、里親のご家族と幸せに暮らしている報告を頂くと、この仕事をやっていてよかったなと思いますね。その子が手のかかった子なら、思い入れが深くなるのかもしれません」
また、里親になる方への審査も厳しく行っています。完全室内飼育と猫が天寿を全うするまで面倒を見る強い覚悟があるのか。そして、里親候補の方への家庭訪問も行い、防止扉や鍵の設置等、猫が外に逃げないための環境作りもお願いする場合もあるそうです。

food-1

本格的な料理は、気持ちが和む盛り付けで提供。

food-2

「キャットタワーフレンチトースト」はボリューム満点。

日々、店舗運営と保護猫活動で多忙を極める桐生さんですが、今後はどのようなお店にしていきたいのでしょうか?
「修業した店舗での経験から、猫たちの様子を眺めながら本格的な料理やドリンク等を提供していること。また、当店からの細かい条件をクリアしてからになりますが、一般の方から猫を引き取ることを公にしているお店は少ないと思いますし、うちのお店の個性になっています。保護猫活動はもちろん大切ですが、それと同じくらいに訪れるお客様が笑顔になってほしいと作ったお店です。そのために、私を含めたスタッフ一同で今後も精進していきたいと思います。その他、意外に情報が少ない里親探しの方法をお客様に提供して、不幸な猫が減り、幸せな猫が増えていく社会に貢献していければと考えています。」

2匹!

お店で出会った猫たちも、まるで兄弟のように仲良くなることもあります。

1017.4 (2)

大好きなオモチャへの食いつきが凄く、こんなにアグレッシブな猫もいますよ。

栃木県内で宇都宮市は交通アクセスもよく、遠方からも比較的行きやすい場所。リラックスした猫に会いに行くもよし、料理や空間を楽しみに訪れるのもよし。様々な楽しみを提供している猫見家に、一度訪れてみてはいかがでしょうか。

猫見家
公式サイト:http://nekomiya.jimdo.com/
アクセス:栃木県宇都宮市江野町3番8号 矢口ビル2階
営業時間:AM11:00-PM22:00 火曜、第1・3水曜日定休(祝日の場合は営業)

著者:広瀬菜穂子