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アンチ岩合、のはずだったけれど

ここ数年、アンチ岩合、である。
仕事仲間や猫好き友人の反応はさまざまで、「え! 猫好きでアンチ岩合なんて、初めて聞いた」「ちょっと巨匠になりすぎちゃったからねぇ」…などなど。

そうなんだ、ちょっと巨匠になりすぎてしまった感がある。
発行されている猫写真集の数も知名度も、とにかく、なにもかも桁違い……になってしまって、あまのじゃくな私は、どんどんアンチ岩合になっていったのだと思う。

そんなわけもあって、岩合さんの本を積極的に仕入れることはないのだけれど、先日、買取した本の中にこんな写真集があった。
『岩合光昭写真集 LOVE CAT LOVE 愛するねこたち』。
猫写真集として、岩合さんが最初に出版した本であるようだ。なんて貴重な!
発行は1978(昭和53)年6月。28歳のときの作品。

『LOVE CAT LOVE 愛するねこたち』写真・著:岩合光昭 詩:落合恵子 昭和53(1978)年6月30日 講談社

「序」には、作家・戸川幸夫さん、エッセイストの熊井明子さんが一文を寄せている。

岩合さんのお父さん・岩合徳光氏を知っている戸川さんからは、若い写真家のスタートを応援するような…。
ご自身も猫を飼い、やわらかな視点でのエッセイが素敵な熊井さんからは、岩合さんの猫写真のやさしく、無邪気な魅力が綴られている。

写真集最初の1枚がこれ。きかんぼうで無邪気な子猫の表情がいい~。

ページをめくると、第1章は「子猫の昼下がり」、第2章「しなやかな貴族」、第3章「こねこのおやねこ・おやねこのこねこ」となっており、それぞれ章のはじめに落合恵子さんの詩が添えられている。

「子猫の昼下がり」をめくっていくと、あれ? どこかで見たような…の写真。

頭の中に「?」を抱えながらさらにページをめくっていくと、海ちゃん!
あまりにも有名な、この海ちゃんの写真。文庫本版『海ちゃん ある猫の物語』の表紙に使われている写真が収録されていた。

こうして写真集の中の、たくさんの猫写真の中で見ても、静かだけれど何か圧倒的な存在感を持つ写真だということを実感する。
『愛するねこたち』の巻末には、岩合さんによる写真の全ページ解説が収録されている。
それによると、この時の海は、《日向ぼっこをしながら、風に竹の葉が触れ合う音を聞いていました。冬の午後、その小さなハーモニーは、軽く、優しく耳をくすぐり、海は、だんだん眠くなってきました》。

実は、私が初めて猫写真集を買ったのは、この『海ちゃん ある猫の物語』である。
言うまでもなく、この表紙に惹かれてのことだった。
岩合さんが撮る海の目に、態度に、海をとりまく空気感に、海の「きもち」が写っているような。そしてまた、奥さまである日出子さんが綴る海との日々がとてもやさしくて、すっかり魅了され、大好きな本となり、今も私の書棚に収まっている。

(写真右上)『海ちゃん ある猫の物語』写真:岩合光昭 文:岩合日出子 初版:平成8(1996)年11月1日 新潮社

あらためて、ずいぶん久しぶりに、『海ちゃん』を読んでみる。
あぁ、なんだか忘れていたなぁ。
やっぱりいいなぁ、岩合さんの写真…(笑)。
あまのじゃくもいい加減にしようと、ちょっと反省。


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