営業時間の殆どを天井近くの隠れ家に籠り過ごすカールス。お客様はカールスを人嫌いだと思っているかもしれません。でも実はとても人懐っこい猫ちゃんなのです。
隠れ家に籠るワケ
カールスは子猫の時、お客様のお膝が大好きでよく乗っていました。開業1ヶ月後の初のTV取材では、女性リポーターがベンチに腰かけた途端、お膝にスルリと自ら乗りに行ったときは感動モノでした。
カールスは、ボス猫マンタと同様、オープンメンバーです
当時、内装費用が大幅に膨れ上がり、初対面のペットショップの社長に無理を承知で2匹分の予算で8匹を依頼した中の1匹でした。そんな事情だったので後から考えるとみんな訳ありの猫ばかりのはずで、行き場が限られた彼らを救ったことになったのかもしれません。いや、本当に救われたのは私なのですが...。当時は、11年ぶりに猫を飼うことに戸惑いを感じながらも、ただみんな可愛いなぁという思いしかありませんでした。
カールスは子猫の時は痩せてましたが、徐々に大きくなって体重が7.5㎏になり、何とか6.5kgに減量したものの、当店で一番大きな猫です。ボス猫のマンタも7.2kgまで迫りましたが、同じく減量し今は5.5㎏でカールスより一回り小さいサイズです。
開業から1〜2年間ぐらいは子猫同士マンタも含め みんな仲良くじゃれ合い、そのうちマンタがボス猫として頭角を現しました。カールスはボス争いには参加しませんでしたが、自分より大きくなっていくカールスに対し、徐々に目障りになっていったようで、カールスが部屋のまん中でまったりしていたり、お客様のお膝でくつろいでいる姿は、マンタにとって許されない光景になりました。そんなカールスを部屋の外から睨みつけ、しっぽをピクッ!ピクッ!とイライラと揺らしたり威嚇します。
それに気づくとマンタの様子を伺いながらカールスは部屋の天井隅にある「カールスの隠れ家」へ籠るようになりました。中に入って来てまで 攻撃されないことが分かったからです。
そんなカールスですが、創業8年目での生駒から心斎橋へ移転後半年間だけは、マンタに怯えることはありませんでした。
内装工事が終わってから移転するはずでしたが、1週間の遅れで猫たちの移転日からプレオープンまで、念の為に取っていた5日間の余裕もなくなり、プレオープンンも2日間ずれ込み、内装工事中に猫たちの移転をせざる負えなくなりました。マンタの唯一の弱点は「音」です。移転後すぐ、マンタは内装工事の音にすっかり臆病になりました。カールスは「音」あまり気にしません。そこで両者の立場が逆転しました。
臆病なマンタが近づいてきても、カールスは逃げず、当時、冬期でもあったのでカールスはお客様のお膝に頻繁かつ長時間乗りに乗りまくっていました。本来お膝乗り好きだったカールスの本領を発揮できた半年間でした。そして その半年間は「カールスの隠れ家」に入っている姿を見たことがありません。
カールスは調子に乗り、逆にマンタにちょっかいを出すようにもなりました。 大人しくなっていたマンタですが、それがどうしても許せなかったようです。次第に奮起し、カールスを威嚇し始めました。カールスもそれがしつこく、鬱陶しくなったのでしょうか、少し背走するようになりました。
最初は余裕で背走していましたが、回数が増える毎にマンタも自信を取り戻し、威嚇に本来の風格が戻ってきました。そしてカールスは天下を取った半年後のGW明けに、「カールスの隠れ家」へ入ってしまいました。果たして、それは二匹の間に勝敗をつけた結果となりました。そうです、ボス猫マンタが復活した瞬間でした。
現在カールスが一日中隠れ家に入っているかといえばそうではありません。1日の過半数を占める夜19時ごろから翌朝11時まではマンタが絶対入ってこない部屋でカールスは隠れ家から出てきてリラックスして過ごしています。営業中でもマンタが猫休憩室に居る時など、カールスは下に降りて来てご飯を食べたり、お客様のお膝に乗ったりとゆっくりしています。
あと嘘みたいな本当の話ですが、当店ではカールスファンの猫たちがカールスガールズを結成してカールスを守っています。猫たちはみんな去勢手術や避妊手術をしています。だからそれら全ては生殖本能からの行動ではありません。猫たちは人以外に対してもプライドや愛情、嫉妬などの人間に近い感情を持ち合わせ行動しているのです。
最近のお客様はごく稀な一部の方を除き、猫たちに優しく接する方が殆どです。お客様に優しく接してもらう工夫を多くの猫カフェで採用しているためだと存じます。
開業時に仕切りのある部屋を造ったのは偶然ですが、結果的に猫同士の関係性により、引きこもる猫がいることを発見できました。部屋を仕切ると営業効率が悪いと内装設計士にも進言されましたが、移転時も仕切りを採用しました。
もちろんカールスのためですが、彼以外の猫たちも積極的にお客様に膝乗りしたりするのは、やはり仕切りがあり、安心できる環境だからだとも思っています。この事例をヒントに、少しでも多くの猫たちが穏やかに暮らしていければ幸いです。