繊細な水彩画。毛1本1本、瞳の輝きもリアリティがあり、うしろ姿のフォルムがなんともかわいらしい表紙に惹かれて、「うわぁ♡」、書店で思わず手に取ったのを覚えている。
帯には《イタリアの隣国「ナーゴ」に暮らす102匹のネコを紹介。個性的なネコたちが醸し出すアナザーワールドに遊ぶガイド》と書かれている。
(ん? イタリアの隣国? そんな国あるのかな? 「ナーゴ」ってそりゃ、日本語の猫の鳴き声をもじってる造語だよね?)
でも、裏側の帯には《世界中を旅したモーリーが、偶然立ち寄って住み着いた国「ナーゴ」。その国で知り合ったネコたちに聞いた物語をまとめました。国の歴史、ガイド、ネコまつりなども取材・紹介し、ネコの楽園「ナーゴ」を日本にいながらにして立体的に楽しめるユニークな本》と書いてある……。
(んー? この国、本当にある国??)
2001年(平成13)10月に発行されたこの本。猫好きならご存知の方も多いだろう。そして誰もがそう思ったに違いない(とまで思う)。
ページをめくると、あまりにも詳細で、本当の旅行ガイド、この国の猫ガイドのよう。
「ナーゴ」の地理的な位置からアクセスも詳しく書かれているのである。ナーゴに住む猫に義務づけられているという登録制度も、「生後3カ月目に市役所の登録課に…」などと詳しい。
ペストが大流行した際に猫たちがねずみを退治してくれたことから、人々に大事にされるようになった…という「ナーゴ」の歴史や通貨の話も。公用語は英語だと言うし…。
ニャンベルク城にミケ・ニャム岬…。これを見ると、フィクションなのだなぁと思うのだけれど…。
そしてこうした設定もさることながら、102匹の猫の紹介ページがもっと素晴らしい!
102匹の猫たちの毛の色、瞳の色。性格も、誕生日も、性別年齢も、ナーゴの国や人々との関わり合いも、すべて違っているのである。
作家やアーティストと呼ばれる人たちの想像力・創造力というのは、それこそ常人には想像もつかないレベルだとは思う。思うが、それにしても、ここまで細かく設定できるということは、実は本当にこの国があるんじゃないかと信じたくなり、本のどこかに小さく「実はこの国は」なーんて書かれているのではないかと、あっちを読み、こっちを読み、本を引っくり返す勢いで何度も読み返したものだ。
102匹の猫の紹介ページが終わると、著者の自己紹介ページがあるのだが、それもリアリティがあること、この上ない!
その後、続編として『ナーゴの子猫たち-いつでもどこでもネコ町物語』(2002年)、『ナーゴの猫町めぐり-いつでもどこでもネコ町物語』(2004年)が発行された。
ネットでは、「ナーゴがどこにあるか、どうやって行けば良いか、ご存じの方は教えてください」といった投稿や、「本当にあったらうれしいけれど、これはやっぱり著者の空想で作られた町だ」といった冷静なブログがあったり、実際にイタリアを旅行した際に地元の観光案内に「猫の町ナーゴを知っていますか?」と聞いたなどというツワモノも現れた。
今回、記事を書くにあたり、久しぶりに読んだのだが、ナーゴという国は(あるいは、そのモデルとなる町は)ある!ということで良いんじゃないかなーと思ってきた。ね、そのほうが楽しいよね。