コピーライターとして、すべきこと

はじめまして、広告会社でコピーライターをしている梅田悟司と申します。9月13日に元野良の黒猫『大吉』からの教えを記した拙著『捨て猫に拾われた男』が発売となりました。素敵な出会いをいただきまして、にゃんこマガジンにて連載させていただく運びとなりました。

この本のテーマは「里親を広告する」「猫にとって、いい猫ブームをつくる」というものです。第一回目となる今回のコラムでは、僕が本書を執筆するにあたって掲げた「里親を広告する」について書かせていただきます。

僕は普段、企業の広告をつくることを仕事としています。皆さんがご存じの広告もつくっているかもしれません。そこで考えたのが、会社の仕事では「商品やサービスといったブランドを広告する」ことを行っているけれど、その方法やノウハウを用いて「猫の里親制度を広告できないか」ということです。

大吉の里親となって一緒に暮らし始めてからというもの、僕は彼の生き様から多くのことを学びました。それと同時に、「こんなに人間も幸せになれる里親のことを、もっと多くの人に知ってもらいたい!」と思うようになったのです。そこで、「自分の職能を活かして、里親制度の広告をつくろう!」という考えに至りました。

価値の提示から、里親への興味を持ってもらいたい

広告をつくる方法、広告的手法とはどういったものなのでしょうか?
その考え方を一言でいえば、価値を提示するということに尽きます。

皆さんが広告を見聞きする時、「この商品はいいよ!」「新発売だから買ってね!」と連呼していたらどう思うでしょうか。答えは簡単。「私には関係ないから、買わない」「なんか自分の話ばっかりしてる」と嫌な気分がするはずです。理解したけれど、納得はしていない、という感じだろうと思います。
その一方で、どんな広告だったら、好きだと感じるでしょうか。これも簡単ですね。「面白くて、親しみが持てる」「自分の役に立つ気がする」といったものだと思います。つまり、「売らんかな」ではなく、きちんと価値に変換されたものなのです。

では、この構造を里親に当てはめてみるとどうなるか。
すると、伝えるべきことは「里親って、いいよ!」「里親は社会にとって必要!」といった里親を主役に据えたものでなく、「里親になると、こんなにいいことがあるよ!」というものになるのです。

今回発売させていただいた『捨て猫に拾われた男』では、大吉の猫背の背中から学んだ24の人生訓が提示されています。例えば、「着地よければすべてよし」「爪痕を残してナンボだろう」という猫の行動から紐解かれたものや、「記念日(=誕生日)はつくるものである」といった里親ならではのものまであります。こうした普段の生活において役に立つ実用的な内容を入り口にしたほうが、里親の魅力が最大限に表現できると考えたのです。

専門家じゃないから、書けることがある

日本には多くの里親活動を行っている団体や個人の方がいらっしゃいます。その一方で、僕は里親の専門家ではなく、知識も経験も不十分であることは間違いありません。しかしながら、専門家じゃないから書けることがある、というのもまた事実です。もう少し詳しく書くと、知り過ぎてしまっているがゆえに、新鮮に感じられなくなってしまったり、見落としてしまいがちなことがあるのです。

僕ができるのは、大吉との暮らしを新鮮な目線で切り取りながら、書くことだけです。ただ、我が家の生活の中には、里親になることで得られる普遍的な価値が含まれているはずです。その共通項みたいなものを探しながら、コピーライターとして丁寧に描き切ることを心掛けました。

猫好きの方にも、犬派の方にも。もしくは、「息抜きしたいなぁ……」と感じている方、心の底からほっこりしたい方にも、読みいただければうれしいです。そして、「里親になってもいいかも」と一人でも多くの方の心を動かせたならば、これ以上の喜びはありません。

次回の連載からは、僕が大吉から学んだことを4回に分けてご紹介していきたいと思います。しばらくの間、お付き合いくださいませ。

著者:梅田悟司

コピーライターとして、すべきこと

はじめまして、広告会社でコピーライターをしている梅田悟司と申します。9月13日に元野良の黒猫『大吉』からの教えを記した拙著『捨て猫に拾われた男』が発売となりました。素敵な出会いをいただきまして、にゃんこマガジンにて連載させていただく運びとなりました。

この本のテーマは「里親を広告する」「猫にとって、いい猫ブームをつくる」というものです。第一回目となる今回のコラムでは、僕が本書を執筆するにあたって掲げた「里親を広告する」について書かせていただきます。

僕は普段、企業の広告をつくることを仕事としています。皆さんがご存じの広告もつくっているかもしれません。そこで考えたのが、会社の仕事では「商品やサービスといったブランドを広告する」ことを行っているけれど、その方法やノウハウを用いて「猫の里親制度を広告できないか」ということです。

大吉の里親となって一緒に暮らし始めてからというもの、僕は彼の生き様から多くのことを学びました。それと同時に、「こんなに人間も幸せになれる里親のことを、もっと多くの人に知ってもらいたい!」と思うようになったのです。そこで、「自分の職能を活かして、里親制度の広告をつくろう!」という考えに至りました。

価値の提示から、里親への興味を持ってもらいたい

広告をつくる方法、広告的手法とはどういったものなのでしょうか?
その考え方を一言でいえば、価値を提示するということに尽きます。

皆さんが広告を見聞きする時、「この商品はいいよ!」「新発売だから買ってね!」と連呼していたらどう思うでしょうか。答えは簡単。「私には関係ないから、買わない」「なんか自分の話ばっかりしてる」と嫌な気分がするはずです。理解したけれど、納得はしていない、という感じだろうと思います。
その一方で、どんな広告だったら、好きだと感じるでしょうか。これも簡単ですね。「面白くて、親しみが持てる」「自分の役に立つ気がする」といったものだと思います。つまり、「売らんかな」ではなく、きちんと価値に変換されたものなのです。

では、この構造を里親に当てはめてみるとどうなるか。
すると、伝えるべきことは「里親って、いいよ!」「里親は社会にとって必要!」といった里親を主役に据えたものでなく、「里親になると、こんなにいいことがあるよ!」というものになるのです。

今回発売させていただいた『捨て猫に拾われた男』では、大吉の猫背の背中から学んだ24の人生訓が提示されています。例えば、「着地よければすべてよし」「爪痕を残してナンボだろう」という猫の行動から紐解かれたものや、「記念日(=誕生日)はつくるものである」といった里親ならではのものまであります。こうした普段の生活において役に立つ実用的な内容を入り口にしたほうが、里親の魅力が最大限に表現できると考えたのです。

専門家じゃないから、書けることがある

日本には多くの里親活動を行っている団体や個人の方がいらっしゃいます。その一方で、僕は里親の専門家ではなく、知識も経験も不十分であることは間違いありません。しかしながら、専門家じゃないから書けることがある、というのもまた事実です。もう少し詳しく書くと、知り過ぎてしまっているがゆえに、新鮮に感じられなくなってしまったり、見落としてしまいがちなことがあるのです。

僕ができるのは、大吉との暮らしを新鮮な目線で切り取りながら、書くことだけです。ただ、我が家の生活の中には、里親になることで得られる普遍的な価値が含まれているはずです。その共通項みたいなものを探しながら、コピーライターとして丁寧に描き切ることを心掛けました。

猫好きの方にも、犬派の方にも。もしくは、「息抜きしたいなぁ……」と感じている方、心の底からほっこりしたい方にも、読みいただければうれしいです。そして、「里親になってもいいかも」と一人でも多くの方の心を動かせたならば、これ以上の喜びはありません。

次回の連載からは、僕が大吉から学んだことを4回に分けてご紹介していきたいと思います。しばらくの間、お付き合いくださいませ。

著者:梅田悟司