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ネコ、ブルーアイズ | 世界のニャ窓から file #7

【世界のニャ窓から file #7】

タイ、バンコク、ラチャテヴィ駅裏手の市場。

バンコクは大都会と言えども、
大通りを一本入るだけでそこに
昔ながらの大きな市場がデンと構えていたりする。

天井の低い体育館のような空間に、
野菜やナマ肉・鮮魚、日用雑貨から宝石まで
あらゆるものが売られている。

活気と喧騒は終日途切れることはなく、
ここが、一般庶民の胃袋と生活と
コミュニティのコミュニケーションを支える
大切な場所であることが分かる。

そして、そこにはネコがいる。
必ずいる。たくさんいる。

どのネコもまるで、
自分たちがそこの地主・家主であるかのような尊大な態度だ。
通路に座り込んでいるばかりか、
大胆にも商品の上で午睡をキメているネコも多い。
過剰に豊かな食住環境からか、
ヒトをヒトと思っていないフシも感じられる。

客たちは大きな買い物袋を抱えながら
狭い通路をネコの尻尾を踏まぬよう、
ネコに触れないよう、
そしてなによりネコの機嫌を損ねないよう、
気を使って歩かなければならない。

夕食の食材を求めに立ち寄ったオレも
そんなネコ状況に少し苛つきながら、通路を進む。

あー、こんなんじゃネコが嫌いになりそうだ。

そう思った次の瞬間、
足元にオレをじっと見上げているネコがいることに気づく。

そのネコは美しい毛並みと端正な小顔が印象的で、
そしてなによりも透き通った薄いブルーの瞳をしている。

そしてその視線はオレをとらえて離さない。
生まれて初めて、ヒト以外のブルーアイズにドキドキし、
それに吸い込まれそうになっている自分である。

するといつの間にか、ブルーアイズに向かって、
さっき一瞬でもネコが嫌いになりそうになったことを謝り、
市場のすべての横柄なネコたちのことを許している…。

ああ、ヒトはこうして何千年もの間、ネコの虜になってきたのか。
なんだか悔しい気もしないではないが、
ネコは特別な生きものだ、と主張する人たちの気持ちが
少し分かった気がした。


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