熊本と大分を中心とした大地震で被災された皆様、避難をされている皆様に、心よりお見舞い申し上げます。
この度の大地震で被災された方々で、ペットを同伴して避難されていらっしゃる方も少なくないと思います。そこで、今回は『災害時における猫へのホリスティックアとしての"手当て"と体調管理』について書かせていただこうと思います。
2013年に環境省により示された「災害時のペットの同行避難の推奨」により自治体の対応も変わりつつあり、また動物病院などでも被災動物の緊急対応が行なわれるなどしていますが、飼い主さんだけで大切なアニマルパートナーのお世話をしなければならない状況にいらっしゃる方は少なくないと思われます。そこで 飼い主さんができる、シンプルで、しかもとても効果的な猫へのホリスティックアとしての"手当て"についてご紹介をさせていただきます(犬、猫両方に応用できる内容です)。
狭くて暗いところにいさせてあげる
猫は揺れに非常に敏感な生き物です。軽い揺れでも、とても緊張してしまう子も少なくありません。猫が怯えている時の外見的な特徴としては、『固まって動かなくなる』 『震える』 『瞳孔が開く(黒目が大きくなる)』 『呼吸が乱れる』 『ちょっとした物音などに対して過敏になる』などが挙げられます。普段はとても懐こい子が触られるのも嫌がる、ということも珍しくないようです。
そのようなときは、猫は狭くて暗いところにいる方が落ち着きやすくなります。特に背中やお尻を何かに付けていられる状況だと、猫は落ち着きを取り戻しやすいことが多いようです。可能であれば、普段使っているケージやキャリーケースにお気に入りの毛布などの"いつもの匂い"を感じられるものを一緒に入れてあげるのが理想的でしょう。それらを用意できない場合は、段ボール箱などで代用して大好きな飼い主さんの匂いのする衣類などを一緒にいれてあげるなどの方法で、狭くて暗い"安心できる居場所"を確保してあげると良いでしょう。ご自宅で過ごすことのできる場合は、いつものケージに入れて布などで覆って目隠しをしてあげると良いでしょう。いつも過ごしている我が家でも、広すぎて落ち着けない子も少なくないからです。(※いずれの場合も、通気や温度湿度の管理には細心の注意が必要です。)
飼い主さんによる癒しとしての"手当て"
そんな猫たちのストレスを取り除いてあげるのに、シンプルで、しかもとても効果的な手段があります。それが、飼い主さんによるホリスティックケアとしての"手当て"です。手当てには不思議な力があります。子どものころ、風邪をひいて寝ているときに、お母さんがおでこやお腹に手をあてて優しく包み込んでくれたら「スッと」不快感が和らいだ、という経験をお持ちの方も少なくないのではないでしょうか。
科学的にはまだまだ解明されていない部分も多いのですが、私たちの生体恒常性を保っている神経系を始めとした身体のメカニズムは、その多くは電気信号(=氣)によって保たれています。そして何よりも、『氣力』や『氣合』、または『病氣』などといった言葉に代表されるように、日本では古(いにしえ)より"氣"というものをとても大切にしてきました。和漢も含めた東洋医学の概念では、"氣"はとても大切な癒しの手段です。そして、誰もができるシンプルで、しかもとても効果的な"氣"をもちいた癒しの手段が、思いやる氣持ちをこめた"手当て"なのです。
猫に"手当て"をしてあげましょう
最初に、手当てをしてあげようとしている子と氣持ちをかよわせます。難しい状況ではありますが、できるだけ心を平安にして我が子と心をかよわせるようにします。そして、思いやる氣持ちをこめて「無事で良かったね」などのポジティブな言葉をかけてあげると、そうした飼い主さんの氣持ちは愛猫にも伝わり、少なからぬ安心感を与えることができるでしょう。
飼い主さんと愛猫の心がかよったら、『心兪』と『神童』というツボを中心とした"心のライン"を手のひらで優しくつつみ込んであげましょう。猫がなおも怯えているようでしたら、手当てをしてあげるだけでも十分な癒しになりますので優しく手当てをしつづけてあげましょう。猫が手当てを受け入れてくれているようでしたら、心のラインにそって優しくさすってあげると、なお良いでしょう。
(1)心兪
第五胸椎上にあります。簡単な探し方としては、左右の肩甲骨の一番出っ張ったところを結んだライン上にある背骨の真ん中が心兪になります。交感神経と副交感神経のバランスを保ち、心を穏やかにしてあげるのに効果的なツボです。「魂に働きかけて」心の平安をもたらしてくれるとも言われています。
(2)神童
背骨の第五胸椎棘(きょく)突起上にあります。簡単な探し方としては、猫の場合は心兪からだいたい指一本半くらい外側(若干の個体差があります)の少し出っ張ったところにあります。心兪と同様に、自律神経系を平安にたもち、また魂にはたらきかけてくれるツボです。
(3)心のライン
心兪、神童を結んだラインを延長してできる、胸まわり全体をぐるっと一円にしたラインを心のラインといいます。これもやはり、自律神経系と魂にはたらきかけてくれます。
下記に詳しく述べますが、ストレスによる初期症状としては胃腸にくることが多いようです。今は『食欲不振』や『下痢』などの症状がみられなくても、次第に胃腸に異常をきたしてしまう猫も少なくないようです。これらの未病を防ぐ手段して、『腎兪』や『脾愈』のあたりを軽く刺激しながらお腹を優しく包み込むように"手当て"してあげることは、とても効果的な癒しの手段です。
また、『耳門』『聴宮』もリラックスのツボで、マッサージをしてあげると猫が安心するのに効果的でしょう。
愛猫がこれらの手当てを受け入れてくれている様子でしたら、さらなる癒しのツボを刺激してあげると良いでしょう。ストレスにさらされた状況で効果的なツボには、『液門』 『神門』 『内関』 『丹田』 『攅竹』 『絲竹空』などがあります。(※詳しくは、『ストレス緩和のツボ−ねこにマッサージをしてみよう!06)をご参照ください https://nyanmaga.com/massage-5/)
アイコンタクト・声によるコンタクト
これらの"手当て"をするときには、アイコンタクトや声によるコンタクトを併せて行うと、より猫たちと心をかよわせることができ、安心させてあげることができます。
(1)アイコンタクト
猫たちは、アイコンタクトをとても重要なコミュニケーションツールとしてきました。ですので、大地震などの災害に見舞われて不安になっている猫に対しては、見つめられたら"優しく両目でウィンク"を返してあげると良いでしょう。猫は野生の本能からか、ジーッと見つめられるのが苦手です。反面、目が合ったときに両目でウィンクを返すというのは、『隙を見せる=敵ではない』という合図になります。これが転じて、「心配ないよ」という意味をもった優しいメッセージになります。
(2)少し高めの声で話しかけましょう
猫は基本的に、平安なときやご機嫌なときには少し高めの声で話をします。そして、母猫が子猫に話しかけるときも、やはり少し高めの声で話しかけます。猫がご機嫌なときの「にゃーっ!」の声を思い出し、できるだけその声に近い感じの、少し高めの声で優しく話しかけてあげましょう。
緊急時の症状判断と対処法
最後に、避難している時に起こることが多い症状の判断と対処法・応急処置についてご紹介いたします(あくまでも、獣医さんに診てもらえるまでの対処法・応急処置です。可能な場合は、すぐに獣医さんに診察してもらうことを推奨いたします。ここでご紹介するのは、それができない飼い主さんに向けた対処法・応急処置です)。
(1)脱水症
皮膚をつまんで放してみます。これによって、皮膚の戻りをチェックします。同時に、口が乾いていないかどうかもチェックします。
⇒対処法
とにかく水分を摂らせることが必要です。コットンやティッシュペーパーなどを水に浸し、口元に当てて少しでも水分を摂れるようにしてあげましょう。微量の塩分も必要になりますで、スポーツドリンクなどが手に入るようでしたら、水分と塩分を同時に摂るのに適した飲み物といえるでしょう(スポーツドリンクに含まれる糖分と塩分の摂り過ぎには注意が必要です)。できる限り早期の獣医さんによる診察が必要です。
(2)熱中症
すでに、少なくはない熱中症の症例が報告されています。熱中症になると顕著なのは、『ふらつく』 『うつろになる』などの症状です。耳は特に顕著ですが、身体全体が熱っぽくなります。
⇒対処法
獣医さんに診てもらうことのできない場合は、対処法・応急処置として、水をかけるなどをして首の後ろ・両脇・両股の部分を冷やしてあげましょう。これらの獣医さんに診てもらうまでの対処法・応急処置は、熱中症になった猫の病状を深刻化させることを遅らせるのに有効な手段のひとつです。
癒し手としての飼い主さん
飼い主さんの優しい言葉と包みこむような"手当て"は、猫たちにとってこれ以上ない癒しとなることでしょう。猫たちはまた、逆に飼い主さんを癒してくれることもあるかもしれません。猫たちを優しく手当てしてあげることは"氣"の交換をという効果をもたらし、お互いの思いやる氣持ちが お互いを癒してくれることでしょう。
一日も早く平穏な日常が戻ってきますよう、心よりお祈り申し上げております。