【世界のニャ窓から file #1】
カンボジア西部、バッタンバン。
フランス統治時代の面影が残る国内第2の街、といっても旅人にとっての見所はあまりない。
暇を持て余してプールを囲むコテージ風の安宿に戻ると、ポーチのデッキチェアで兄弟ネコがとろとろと昼寝をしている。
そっと近づくが、彼らは立ち上がるそぶりなど見せぬまま、瞳だけをこちらに向ける。
「そこはオレが惰眠を貪ろうと思っていた場所なんだけどなー」と言いかけてやめた。
その場所がネコたちの毎日の定位置で、オレこそが彼らの安息の時間へ闖入者であることに気づいたからだ。