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「猫」と「お薬」にまつわるあれこれ

まだまだ寒い日が続きますね。冬は免疫力の低下などで体調を崩しやすいのは人間も猫さんも同じ。今回は、そんな時にお世話になる「お薬」にまつわる豆知識をご紹介します。

①猫と人間では、薬の代謝経路がちょっと違う

飲んだ薬が効果をあらわし、代謝され、排泄されるために、体内では様々な経路の化学反応が起こっています。この経路のひとつに、「グルクロン酸抱合」というものがありますが、猫はこのグルクロン抱合に必要な酵素を持っていません。そのため、薬の種類によってはうまく代謝ができず、猫さんにとっては猛毒になってしまうものがあります。

代表的なのは人間の風邪薬に必ずと言っていいほど入っている「アセトアミノフェン」という解熱剤です。人間にとっては非常に安全性が高く、小児用を含む市販薬に使用されていますが、猫が摂取すると、沈鬱、食欲廃絶、黄疸などが起こり、最悪の場合は死に至ります。愛猫が風邪っぽいなと思っても、人間の風邪薬は絶対に飲ませないでください!

②お薬のあとは水を絶対飲ませよう!

猫さんは人間や犬と比べて食道の蠕動運動(飲み込んだものを胃に送り込もうとする運動)の速度が遅く、薬が食道に留まるリスクが高い動物です。薬がうまく胃に送られずに、長時間食道の壁にくっついたままだと、そこから炎症が起きて食道炎を起こすことがあります。食道炎が進行すると「食道狭窄」といって、食道が非常に狭くなって食物が胃に送られなくなる最悪の事態も起こりえます。これを予防するために、お薬を飲ませた後は必ず水分を摂らせましょう。ウェットフードを食べさせてもOKです。

また、体格の小さな猫さんは特に、錠剤を半分や1/4などに割って飲ませる場合も多いのですが、薬の断面が尖っていて飲みづらそうな場合は、カプセルに詰めて飲ませるのも効果的です。カプセルは表面がつるんとしているので、比較的飲み込みやすいようです。カプセルは薬局にも売っていますし、動物病院で処方してくれる場合もあります。

③ステロイドには比較的強い

炎症を抑えたり、免疫反応を調節したり、様々な症状に使われるステロイド剤。人間や犬に比べると、猫さんは比較的ステロイドのお薬に強く、副作用による悪影響も出にくいです。ただしこれには個体差があり、また、ステロイド剤は求める効果によって使用量が大きく異なるお薬ですので、「比較的強い」と表現しています。動物病院でもらったステロイド、猫の体格に対して大きくないかな?と思ったら、まずは病院に問い合わせてみてください。親切な病院であれば、納得いくまで説明をしてもらえるはずです。

④砂糖水に溶かしても甘さは感じない

「粉の薬が飲みにくいから、少量の砂糖水に溶かして飲ませる」。人間のお子さんには有効な方法ですよね。しかし、猫さんの舌には甘味を感じる細胞がないので、この方法はほぼ通用しません。「ほぼ」と書いたのは、それでも調剤用のシロップに薬を溶いて猫さんに処方することが頻繁にあるからです。実際、シロップの薬なら喜んで飲むという猫さんもいるので、おそらく「舌触り」や「とろみ」など、甘さ以外の何かを気に入ってくれていると推測しています。ちなみに、猫が好きなのは甘いものではなく油っぽいもの。少量(ティースプーン1杯弱)のオリーブオイルに薬を溶かして与えると、喜んで舐める子もいます。その他、好きなウェットフードや猫用ミルクなど、ほとんどの薬は食べ物に混ぜて与えても効果は変わりませんので、「お薬タイム=楽しいおやつの時間」と思ってもらえるよう、色々試してみてくださいね。

人間も猫さんも、お薬なんて無縁の生活が一番の理想ですね。でも、辛いときに無理に我慢する必要はありません。特に猫さんの場合、周囲の人や動物には体調が悪いことを隠したがるので、飼い主が気づいたときは意外と症状が進んでいる場合もあります。些細な変化でも、どうぞ動物病院にご相談くださいね。


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