猫の糖尿病、最初の難関はインスリンの量を決めること。血糖値を安定させるためにはインスリンが必須となるが、この量を決定するまでが獣医泣かせ。量が少なければケトアシドーシス(症状については前回のコラムをお読みください)、逆に多ければ低血糖症。どっちに振れてもリスクが高い上に、猫の血糖値はストレスでも跳ね上がり、とにかく安定しない。

入院ができない好のために、先生は他の患者(患畜とは書きたくない)の影響を受けないように配慮して、通院時間を開院前に指定する。好のストレスがかからないうちに血糖値を測るという試みだが、しかしそこは人気病院。開院5~10分前には他の患者さんたちが来てしまうことも多かった。結果、通院が開院30分前なんてこともあり、病院のスタッフ全員に時間外労働を強いてしまうことにもなった。

好は聞き分けの良い猫。私も全てが通じるとは思ってはいないが、症状を本猫に知らせることも大事だと思い、逐一症状は説明している。

流れとしては、家でフードを食べる→すぐに病院に連れて行き、血糖値を測る→インスリン量の指導、実施→一度帰宅→午後の診療時間前に通院し、血糖値を測る→また帰宅→夜の閉院前に通院し、血糖値を測る。だいたい1日3回通院するのだが、これは入院よりはマシとは言え、好には大変ストレスで、3日も経たずに全身フケだらけになってしまった。一瞬、ダニを疑ったが、好は1~2カ月に一度、フロントライン(駆虫薬)をしているからそれはないだろう。

蒸しタオルを冷まして体を拭きつつ励ますものの、通院はやめられない。でも10人中10人が「おとなしい」と評価する好だから、この大変な通院も実現できた。同居猫、晧(あきら)は病院を察するとすごい勢いで逃げて抵抗するので、捕獲に1時間以上かかることもある。好は文句は多いが、あっさり捕まってくれて、キャリーにも入れられる。でも、おとなしいからといって何も感じていないわけじゃない。恐くて漏らしてしまうこともあるので、ペットシーツをお尻にあてつつ、抱っこしてキャリーへ運ぶ、ということもあった。車で通院できたことも良かったと思う。特に18年夏は酷暑で、ヒトもバテてしまう状態だった。

病院から帰って一息。緊張はまだとれない。

夏休み最終日にようやくインスリンの量が決定した。好の場合、インスリンは遅効性の「ランタス」に決まり、2単位からスタート。朝、フードを食べた後に1日1回打つ。これは普段は会社員で帰宅時間が定まらない私にはありがたい処方だった。

最初はインスリン注射をうまく打てるか不安もあったが、毎日のことなので飼い主である私がやるしかない。手際よく行うために、導線を整備する。ランタスは要冷蔵なので、タッパに必要なキットをすべて入れて、冷蔵庫に保管。量を厳密に測る必要があるので、キッチンに100均ライトを設置して透かしながら量を決定。注射器から空気を抜いて(針を上に向けて指ではじくと空気は抜けやすい)、アルコールコットンで皮膚を拭いて、皮膚をつまんだら、後は思い切りが大事。もたもたしていたら、好に恐さが伝わってしまう。

100均の磁石付きライトをキッチンの見やすいところに設置。手の甲で押せば点灯する

針を刺したら5秒待つ。最初は焦って待てなかったので、冷蔵庫に手順をメモして貼っておいた。おおまかな流れとしては、朝ごはんを食べさせ、インスリンを用意してから、できるだけ気づかれないように好に近づく。体を撫でて、「可愛い、良い子だ」と褒めたたえ、その隙に皮膚をつまんでアルコールコットンで拭いて、注射。注射後はまたアルコールコットンで軽く拭いて、「よくやった、えらい良い子だ」とさらに褒めたたえ、道具を片付ける。

失敗した場合、再トライはNGで、基本的に一発勝負。時々、好からは「んー」と抗議の声があがるが、さらに褒めちぎり、出勤前の一仕事が終わる。

週末は血糖値計測で通院の必要性はあるが、平日は通院しなくなると、好のフケはあっさり収まった。インスリン注射は大変だけど、慣れればそれほど負担ではない。このまま寛解することを願っていた矢先、さらなる試練が待っていたのだった。

著者:猫賃大家 feles☆きゃったー


猫の糖尿病、最初の難関はインスリンの量を決めること。血糖値を安定させるためにはインスリンが必須となるが、この量を決定するまでが獣医泣かせ。量が少なければケトアシドーシス(症状については前回のコラムをお読みください)、逆に多ければ低血糖症。どっちに振れてもリスクが高い上に、猫の血糖値はストレスでも跳ね上がり、とにかく安定しない。

入院ができない好のために、先生は他の患者(患畜とは書きたくない)の影響を受けないように配慮して、通院時間を開院前に指定する。好のストレスがかからないうちに血糖値を測るという試みだが、しかしそこは人気病院。開院5~10分前には他の患者さんたちが来てしまうことも多かった。結果、通院が開院30分前なんてこともあり、病院のスタッフ全員に時間外労働を強いてしまうことにもなった。

好は聞き分けの良い猫。私も全てが通じるとは思ってはいないが、症状を本猫に知らせることも大事だと思い、逐一症状は説明している。

流れとしては、家でフードを食べる→すぐに病院に連れて行き、血糖値を測る→インスリン量の指導、実施→一度帰宅→午後の診療時間前に通院し、血糖値を測る→また帰宅→夜の閉院前に通院し、血糖値を測る。だいたい1日3回通院するのだが、これは入院よりはマシとは言え、好には大変ストレスで、3日も経たずに全身フケだらけになってしまった。一瞬、ダニを疑ったが、好は1~2カ月に一度、フロントライン(駆虫薬)をしているからそれはないだろう。

蒸しタオルを冷まして体を拭きつつ励ますものの、通院はやめられない。でも10人中10人が「おとなしい」と評価する好だから、この大変な通院も実現できた。同居猫、晧(あきら)は病院を察するとすごい勢いで逃げて抵抗するので、捕獲に1時間以上かかることもある。好は文句は多いが、あっさり捕まってくれて、キャリーにも入れられる。でも、おとなしいからといって何も感じていないわけじゃない。恐くて漏らしてしまうこともあるので、ペットシーツをお尻にあてつつ、抱っこしてキャリーへ運ぶ、ということもあった。車で通院できたことも良かったと思う。特に18年夏は酷暑で、ヒトもバテてしまう状態だった。

病院から帰って一息。緊張はまだとれない。

夏休み最終日にようやくインスリンの量が決定した。好の場合、インスリンは遅効性の「ランタス」に決まり、2単位からスタート。朝、フードを食べた後に1日1回打つ。これは普段は会社員で帰宅時間が定まらない私にはありがたい処方だった。

最初はインスリン注射をうまく打てるか不安もあったが、毎日のことなので飼い主である私がやるしかない。手際よく行うために、導線を整備する。ランタスは要冷蔵なので、タッパに必要なキットをすべて入れて、冷蔵庫に保管。量を厳密に測る必要があるので、キッチンに100均ライトを設置して透かしながら量を決定。注射器から空気を抜いて(針を上に向けて指ではじくと空気は抜けやすい)、アルコールコットンで皮膚を拭いて、皮膚をつまんだら、後は思い切りが大事。もたもたしていたら、好に恐さが伝わってしまう。

100均の磁石付きライトをキッチンの見やすいところに設置。手の甲で押せば点灯する

針を刺したら5秒待つ。最初は焦って待てなかったので、冷蔵庫に手順をメモして貼っておいた。おおまかな流れとしては、朝ごはんを食べさせ、インスリンを用意してから、できるだけ気づかれないように好に近づく。体を撫でて、「可愛い、良い子だ」と褒めたたえ、その隙に皮膚をつまんでアルコールコットンで拭いて、注射。注射後はまたアルコールコットンで軽く拭いて、「よくやった、えらい良い子だ」とさらに褒めたたえ、道具を片付ける。

失敗した場合、再トライはNGで、基本的に一発勝負。時々、好からは「んー」と抗議の声があがるが、さらに褒めちぎり、出勤前の一仕事が終わる。

週末は血糖値計測で通院の必要性はあるが、平日は通院しなくなると、好のフケはあっさり収まった。インスリン注射は大変だけど、慣れればそれほど負担ではない。このまま寛解することを願っていた矢先、さらなる試練が待っていたのだった。

著者:猫賃大家 feles☆きゃったー