相談内容

賃貸物件で里親募集型保護猫カフェを営業しています。昨年末、排水管が詰まり、緊急事態だったこともあってこちらで水道屋さんを呼んで修理しました。ところが貸主は「猫がたくさんいるから詰まった」と言い張り、修理代を支払ってくれません。それどころか、「定期借家の再契約をしない」との通達を送ってきました。借りるときは「再契約すればいいだけだから定期借家契約にしたい」と言われ、従いましたがそのことは書面には残っていません。

この物件が建つ前から事情を知っている隣家の方によると、この物件は過去に2回排水管が詰まって汚水が上がり、都度揉めて入居者が退去しているそうです。これまで通算3社の水道屋さんに見てもらいましたが、いずれも「排水管が逆勾配か歪みがある」との意見。水道屋さんが「修理しないなら毎年高圧洗浄をした方がいい」とアドバイスしてくれましたが、貸主は「する必要がない。戸建てで毎年高圧洗浄をするなんて聞いたことがない」と拒否。結果、当店がオープンして2年で詰まることになりました。

さらに、許可をもらって物置代わりに使っていたガスメーター室の荷物も「すぐに出せ」と言ってきたり、共有スペースであるはずの裏口の照明のブレーカーを落としたり、水道屋さん3社をそれぞれ長時間にわたって恫喝したりと、嫌がらせとも取れる圧力をかけてきました。釈然としませんが、定期借家のため、事実上立ち退きにはならず、泣き寝入りです。内装工事費として銀行から借りた借入金がまだ300万ある中での移転。もちろん、貸主もそれを知っています。

「猫に関するテナントに入ってもらいたい」と言われ入居したのですが、たったの2年半しか営業できませんでした。地元の方々にとても歓迎され、60頭以上の猫に里親が決まりり、これからもっとたくさんの猫たちを幸せにできるはずでした。何も対抗する手立てはないのでしょうか。せめて水道屋さんに支払った10万円は返してもらいたいです。

弁護士からの回答

里親募集型保護猫カフェ、素晴らしいですね。これまでさんざん苦労してきた子たちには、家族として迎え入れてくれる里親さんを見つけてあげたいものです。ところで今回の物件ではかなり苦労しましたね。次の物件はよい物件であることを祈ります。とばっちりを食うのは猫さんたちですもんね。

まず、貸し主から、再契約をしないという通知が送られてきた点ですが、これは仕方がありません。定期借家契約は契約期間の満了により終了し、更新のない契約ですので、期間満了により借り主は物件から退去しなければなりません。このような事態を避けるためには、定期借家契約は結ばず、通常の建物賃貸借契約にすれば、貸し主は正当な事由がない限り、更新拒絶も借り主に対する退去請求もできなくなります。

さて、排水管の修理代金10万円は、貸し主に請求できる可能性がありますよ。建物の賃貸借において、借り主が負担する補修費用は、借り主の管理義務違反によって物件を損傷・汚損等させた場合の修復費用です。例えば、家具を移動する際にフローリングに傷を付けたり、清掃を行わなないで放置したためにクロスを汚損させたような場合です。

排水管の詰まりの原因が、猫の毛、吐しゃ物、トイレ砂等であったなら、これはあなたの管理義務の違反ですので、借り主であるあなたが排水管の修理費用を払わなくてはなりません。しかし、詰まりの原因が、排水管の逆勾配か歪みである場合は、明らかに貸し主の責任です。貸し主は、本来、排水管の逆勾配や歪みを修理して、排水管が詰まらないようしてから借り主に物件を貸さなければなりません。

そこで、この物件では、詰まりの原因が、排水管の逆勾配か歪みであることを証明できれば、貸し主に修理代を請求することができます。

貸し主に請求する前提として、まず証拠を集める必要があります。あなたが水道屋さんに修理を行ってもらった際に、水道屋さんが詰まりの原因を何と判断したのか、それを記載した資料を揃えてください。詰まりの原因が、排水管の逆勾配か歪みであると判断したのであれば、それを水道屋さんに記載してもらってください。猫の毛、吐しゃ物、トイレ砂等やその他の物が詰まっていなかったのであれば、それも記載してもらってください。

それと、以前水道屋さん3社が調査して、詰まりの原因が排水管の逆勾配か歪みであると判断した際の資料、及び、修理しないなら毎年高圧洗浄した方がよいとのアドバイスしたことに関する資料も、あると良いです。
証拠集めが終われば、貸し主に修理代金を請求して、支払われなければ訴訟の提起もあり得ます。
(画像はイメージです。写真提供=ねこたろう

回答者:弁護士 林太郎


 

相談内容

賃貸物件で里親募集型保護猫カフェを営業しています。昨年末、排水管が詰まり、緊急事態だったこともあってこちらで水道屋さんを呼んで修理しました。ところが貸主は「猫がたくさんいるから詰まった」と言い張り、修理代を支払ってくれません。それどころか、「定期借家の再契約をしない」との通達を送ってきました。借りるときは「再契約すればいいだけだから定期借家契約にしたい」と言われ、従いましたがそのことは書面には残っていません。

この物件が建つ前から事情を知っている隣家の方によると、この物件は過去に2回排水管が詰まって汚水が上がり、都度揉めて入居者が退去しているそうです。これまで通算3社の水道屋さんに見てもらいましたが、いずれも「排水管が逆勾配か歪みがある」との意見。水道屋さんが「修理しないなら毎年高圧洗浄をした方がいい」とアドバイスしてくれましたが、貸主は「する必要がない。戸建てで毎年高圧洗浄をするなんて聞いたことがない」と拒否。結果、当店がオープンして2年で詰まることになりました。

さらに、許可をもらって物置代わりに使っていたガスメーター室の荷物も「すぐに出せ」と言ってきたり、共有スペースであるはずの裏口の照明のブレーカーを落としたり、水道屋さん3社をそれぞれ長時間にわたって恫喝したりと、嫌がらせとも取れる圧力をかけてきました。釈然としませんが、定期借家のため、事実上立ち退きにはならず、泣き寝入りです。内装工事費として銀行から借りた借入金がまだ300万ある中での移転。もちろん、貸主もそれを知っています。

「猫に関するテナントに入ってもらいたい」と言われ入居したのですが、たったの2年半しか営業できませんでした。地元の方々にとても歓迎され、60頭以上の猫に里親が決まりり、これからもっとたくさんの猫たちを幸せにできるはずでした。何も対抗する手立てはないのでしょうか。せめて水道屋さんに支払った10万円は返してもらいたいです。

弁護士からの回答

里親募集型保護猫カフェ、素晴らしいですね。これまでさんざん苦労してきた子たちには、家族として迎え入れてくれる里親さんを見つけてあげたいものです。ところで今回の物件ではかなり苦労しましたね。次の物件はよい物件であることを祈ります。とばっちりを食うのは猫さんたちですもんね。

まず、貸し主から、再契約をしないという通知が送られてきた点ですが、これは仕方がありません。定期借家契約は契約期間の満了により終了し、更新のない契約ですので、期間満了により借り主は物件から退去しなければなりません。このような事態を避けるためには、定期借家契約は結ばず、通常の建物賃貸借契約にすれば、貸し主は正当な事由がない限り、更新拒絶も借り主に対する退去請求もできなくなります。

さて、排水管の修理代金10万円は、貸し主に請求できる可能性がありますよ。建物の賃貸借において、借り主が負担する補修費用は、借り主の管理義務違反によって物件を損傷・汚損等させた場合の修復費用です。例えば、家具を移動する際にフローリングに傷を付けたり、清掃を行わなないで放置したためにクロスを汚損させたような場合です。

排水管の詰まりの原因が、猫の毛、吐しゃ物、トイレ砂等であったなら、これはあなたの管理義務の違反ですので、借り主であるあなたが排水管の修理費用を払わなくてはなりません。しかし、詰まりの原因が、排水管の逆勾配か歪みである場合は、明らかに貸し主の責任です。貸し主は、本来、排水管の逆勾配や歪みを修理して、排水管が詰まらないようしてから借り主に物件を貸さなければなりません。

そこで、この物件では、詰まりの原因が、排水管の逆勾配か歪みであることを証明できれば、貸し主に修理代を請求することができます。

貸し主に請求する前提として、まず証拠を集める必要があります。あなたが水道屋さんに修理を行ってもらった際に、水道屋さんが詰まりの原因を何と判断したのか、それを記載した資料を揃えてください。詰まりの原因が、排水管の逆勾配か歪みであると判断したのであれば、それを水道屋さんに記載してもらってください。猫の毛、吐しゃ物、トイレ砂等やその他の物が詰まっていなかったのであれば、それも記載してもらってください。

それと、以前水道屋さん3社が調査して、詰まりの原因が排水管の逆勾配か歪みであると判断した際の資料、及び、修理しないなら毎年高圧洗浄した方がよいとのアドバイスしたことに関する資料も、あると良いです。
証拠集めが終われば、貸し主に修理代金を請求して、支払われなければ訴訟の提起もあり得ます。
(画像はイメージです。写真提供=ねこたろう

回答者:弁護士 林太郎