動物関連の書籍などでよく見かけ、猫に関する書籍も多い「今泉先生」。
今、私の手元には「今泉先生」の本が3冊あって、下の名前は3つ。3人の「今泉先生」がいるわけだ。

今泉ネコ本3冊 (500x302)

(写真左から)『ネコの世界』著者:今泉吉典、今泉吉晴 発行所:平凡社 初版発行年:昭和50(1975)年2月8日/『ネコの探求』著者:今泉吉晴 発行所:平凡社 初版発行年:昭和52(1977)年3月8日/『猫はふしぎ』著者:今泉忠明 発行所:イースト・プレス 初版発行年:平成27(2015)年9月20日

きっと親子なんだろうなぁと思いつつ、調べてみたら、今泉吉典さんがお父さん(故人)。吉晴さんと忠明さんは吉典さんの子どもで、吉晴さんが兄、忠明さんが弟。さらに、忠明さんには勇人さんというお子さんがいて、『カラス狂騒曲』という親子共著があることもわかった。

続きを読む...

動物関連の書籍などでよく見かけ、猫に関する書籍も多い「今泉先生」。
今、私の手元には「今泉先生」の本が3冊あって、下の名前は3つ。3人の「今泉先生」がいるわけだ。

今泉ネコ本3冊 (500x302)

(写真左から)『ネコの世界』著者:今泉吉典、今泉吉晴 発行所:平凡社 初版発行年:昭和50(1975)年2月8日/『ネコの探求』著者:今泉吉晴 発行所:平凡社 初版発行年:昭和52(1977)年3月8日/『猫はふしぎ』著者:今泉忠明 発行所:イースト・プレス 初版発行年:平成27(2015)年9月20日

きっと親子なんだろうなぁと思いつつ、調べてみたら、今泉吉典さんがお父さん(故人)。吉晴さんと忠明さんは吉典さんの子どもで、吉晴さんが兄、忠明さんが弟。さらに、忠明さんには勇人さんというお子さんがいて、『カラス狂騒曲』という親子共著があることもわかった。

世に出ている本の著者「今泉先生」は4人いて、3代にわたる動物学者ファミリーだったのか~!

白猫とバラ (500x396)

『ネコの世界』より

これは吉典さん・吉晴さん親子による共著『ネコの世界』の巻頭カラーページ。
字が黄色なので写真だと読みにくいと思うが、“学者”というイメージとはだいぶ違う、やわらかな印象の「詩」が載っている。
《ネコはネコである バラの咲いている午後の庭 ネコはネコらしく 円い ちいさなからだをのばしたり ちぢめたりしながら ゆっくりと うごく
ネコはネコであることによって幸福 その単純 その孤独 その敏捷 その倦怠 その可憐 ふりそそぐ 日の光をあびている 円い ちいさなライフ ちいさな 円いライフ》

さらに本文に入っていくと、そこにも猫愛あふれる文章が続いていく。
この部分の執筆を担当したのは、吉晴さんのほうだ。

自然が作った最高の芸術 (500x375)

『ネコの世界』より

《彼の低く身構え、緊張感をみなぎらせながら獲物に接近する姿、美しい一瞬の跳躍こそ、ネコぎらいの人間といえども、一定の尊敬と興味をネコに対してはらわざるを得なくしているものなのだ》
《人間とちがって道具や機械を持たない動物にとっては、体の各部分が一定の具体的な使用目的にあわせた道具だ。ネコの体は獲物を捕獲するための完成された道具の統合体であり、それでこそ自然のつくり出した芸術的完成品といわれるのである》

などなど。
東京農工大学の獣医学科を卒業し、動物生態学の専門家だからこその具体的でわかりやすい情報…に加え、猫に対する深~い愛情と尊敬の念も伝わってくる。しかも、ちっともくどくなく、さらりと、でもしっかりと。

このあとも、「表情があるのはネコとイヌとサルだけ」「ネコ仲間のつきあい」「恋の歌」「子を育てる」「狩り」などと続いていく。たとえば「狩り」の章では、
《獲物に近付くと、しのび走りはしだいに慎重になる。そしてついに獲物におそいかかる前の最後の観察が行われる。後足は交互に足ぶみされ、尾の先端がわずかに動く》

一読しただけで、目の前に猫が獲物を狙う情景が浮かんでくる。
昔の本は一見すると活字が小さくて、文章が詰まっているように見え、読みにくく感じる方もいると思うが、そこを軽く飛び越えてぐいぐい読めてしまうのは、専門知識に加え、動物、猫へのあふれんばかりの愛情が行間から伝わってくるからだと思う。読む人を惹きつけて離さない感じ。

ネコの秘密 (500x401)

『ネコの世界』より

そしてたとえば、「恋の歌」では、交尾期のネコの声について、
《何と表現したらいいのか、奇妙なネコの声が聞こえてくる。たえず転調される、長く長く続く鳴声だ。だが、これを恋の歌と思っては少々早まりすぎる。実際は、雄どうしのいつわりの恋の歌なのだ》

いつわりの恋の歌!
長く長く続く奇妙な鳴き声は雄ネコ同士が1匹の雌ネコをめぐって争うときの声だということなのだが、それを《いつわりの恋の歌》などと書かれると、単なる猫の生態が、一瞬にしてみずみずしい、生き生きとした情景にかわる。
そして吉晴さんによれば、雄ネコ同士の争いに勝ち、雌ネコに対する求愛行動のときの、1~2音節で転調しながら短く鳴く声が《真の恋の歌》なのだそうだ。

マザーグース (500x392)

『ネコの探求』巻頭カラーには、詩ではなく、ネコに関する世界各地の民話や物語が添えられている

この『ネコの世界』から2年後に出版されたのが『ネコの探求』。
著者は吉晴さんひとりとなり、前作同様、猫愛にあふれる優しい文章で、飼っている猫との生活をより快適で楽しいものにするための情報がつづられている。
「擬人主義と擬猫主義」「親しみの表現」「しぐさの意味」「子どもの時代」「獣医にかかる」「マンションのネコ」…等々。

そこからさらに時は流れて、昨年9月に出版された『猫はふしぎ』。著者は吉晴さんの弟である忠明さん。東京水産大学(現・東京海洋大学)を卒業後、国立科学博物館で哺乳類の分類学・生態学を学び、文科省の国際生物計画調査など各地で動物相の調査に参加した哺乳動物学者である。
…なのだが、今では「ねこの博物館館長」という肩書きのほうがポピュラーかも!?